COLUMN
#土木インフラの仕組み

SDGs時代の建設業とは?持続可能な社会とインフラ整備
2025.6.18
気候変動、資源の枯渇、人口減少──私たちの社会はかつてない転換点に立たされています。
こうした課題に対応するために掲げられたのがSDGs(持続可能な開発目標)です。そして今、その実現に向けて重要な役割を果たすのが、インフラ整備の最前線に立つ建設業です。
インフラ、SDGs、建設業という3つのキーワードは、もはや切っても切り離せない関係にあります。
本コラムでは、建設業が抱える人材や環境の課題をふまえ、持続可能な社会を支えるためにどのような変革が求められているのかを、「インフラ」「SDGs」「建設業」という3つの視点から読み解いていきます。
SSFホールディングスは、当社がこれまで手がけてきた事業の経験とノウハウを活かし、透明性ある経営と持続可能な成長を追求し、SDGsを意識した社会課題を解決する活動を続けています。

建設業が支える日本のインフラの今
社会基盤としてのインフラと建設業の役割
私たちが日々の暮らしを送る上で欠かせない「インフラ」。
それは単に道路や橋といった目に見える構造物だけにとどまりません。上下水道、電力、通信、公共施設、防災設備など、あらゆるライフラインを支える仕組みそのものがインフラです。そして、それらを計画・設計・建築・維持管理しているのが建設業です。
日本は高度経済成長期において、急速な都市化とともに大量のインフラを整備してきました。1964年の東京オリンピックや1970年の大阪万博に向けて、道路、鉄道、空港、上下水道の整備が一気に進みました。現在の生活の快適さや安全性は、まさにその時代に築かれたインフラと建設業の力によって支えられているといえるでしょう。
老朽化するインフラ、進む少子高齢化
しかし、当時整備された多くのインフラはすでに築50年を超え、老朽化が進んでいます。老朽インフラの維持・補修には、膨大な労力と技術、そして継続的な投資が不可欠です。
加えて、少子高齢化による労働力不足も深刻です。特に建設業では若年層の就業率が低く、現場では技能継承が難しくなっています。インフラの整備・維持において必要な人材がいない、という問題は、地域社会全体の持続可能性に関わる大きな課題となっています。
「見えにくい」仕事の価値をどう伝えるか
もうひとつの課題は、「建設業=ハードでキツい仕事」という固定観念です。たしかに、屋外での作業や重機の操作といった身体的な負荷がある現場も少なくありません。しかし近年では、ICT建機の導入やBIM(Building Information Modeling)による設計管理の効率化、クラウド型の進捗管理など、建設業は確実にスマート化しています。
つまり、いまの建設業は、かつてのように「現場で汗を流す力仕事」というイメージだけでは語れなくなっています。実際には、最先端の技術や蓄積された知識を駆使して、より効率的に、よりスマートに社会を支える方向へと、着実にその姿を変えつつあるのです。
そうした進化を、社会のなかでどう位置づけるのか。そして、未来を担う若者たちにどう伝え、どう響かせていくのか。
この問いに真正面から向き合うことこそ、建設業が抱える深刻な人材不足を乗り越える糸口になり得ます。また同時に、それはSDGsの理念に沿った社会貢献の形を、実際の現場から具体的に示していく重要な一歩でもあるのです。
インフラ整備はSDGsの土台である
SDGsの17の目標には、「すべての人にインフラへのアクセスを」「住み続けられるまちづくりを」「産業と技術革新の基盤を整える」といった、建設業の活動と直接関係する内容が数多く含まれています。

つまり、インフラを整え、持続可能なまちを維持していくには、建設業の存在が不可欠であるということです。
今や建設業は単に構造物をつくる産業ではなく、社会そのものの未来を築く仕事だと言っても過言ではありません。インフラ、SDGs、建設業──この三者は今後さらに密接な関係となり、次の時代を形づくる大きな力となっていくでしょう。
SDGsとは何か?建設業との関係を考える
SDGsの基本理念と17の目標
「SDGs(持続可能な開発目標)」とは、2015年に国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を実現するための国際的な目標です。持続可能性(Sustainability)を軸に、貧困の解消、教育の普及、環境保全、ジェンダー平等、経済成長と雇用、インフラ整備など、多岐にわたる17の目標と169のターゲットから構成されています。
一見すると建設業とは縁遠く見えるかもしれませんが、実はこのSDGsの多くがインフラ整備と密接に関係しています。
中でも建設業と密接な関わりがあるのが、以下のような目標です。
- 目標6「安全な水とトイレを世界中に」
- 目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
- 目標11「住み続けられるまちづくりを」
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」
これらの目標の多くは、インフラの整備・更新と直結しており、建設業の果たすべき役割は極めて大きいものです。
建設業が担う「SDGs 持続可能な社会」の実現
では、建設業はSDGsの実現において、具体的にどのような役割を果たしているのでしょうか。
例えば、災害に強い街づくりには、耐震性能の高い建物の設計や、防災インフラ(堤防、避難施設など)が欠かせません。さらに、再生可能エネルギーを活用した建物の設計や、CO₂排出を抑えた工法の導入といった技術革新も、気候変動対策において重要な取り組みの一つです。
また、持続可能な水資源の管理には、上下水道施設の効率的な運用や、再利用システムの整備が求められます。こうしたインフラの整備と維持は、まさに建設業の中核的な業務です。
つまり、SDGsの理念を現実の社会基盤へと“形にする”ことができるのが建設業の強みです。見えにくいけれど確実に人々の暮らしを支える仕事だからこそ、SDGsとの相性も抜群なのです。
「つくる責任」と「使う責任」のバランス
SDGsの中には「目標12:つくる責任、つかう責任」というテーマがあります。建設業にもこの視点は欠かせません。
例えば、使用する資材においては、再生材や環境負荷の少ない素材の選定が重要です。さらに、建設業の現場で発生する廃棄物の適正処理やリサイクルの促進なども「つくる責任」に該当します。
一方、「使う責任」には、インフラや建物の長寿命化、省エネルギー化、メンテナンスの合理化が含まれます。建設業がこれらに真摯に取り組むことは、環境への影響を抑え、次世代に負担を残さない社会を築く上で重要なステップです。
建設業とSDGsの関係性を社会に伝えることの大切さ
これまで、SDGsという言葉は行政や教育の現場でよく使われてきましたが、建設業の中ではまだ十分に浸透しているとは言えない部分もあります。実際の現場ではすでにSDGsの目標に貢献しているにもかかわらず、それが「SDGs的活動」として明確に意識されていないケースも多いのです。
だからこそ、建設業がSDGsの一翼を担う存在であることを、もっと社会に発信する必要があります。それは企業のブランディングや採用活動にもつながり、若い世代の関心を引く契機にもなりうるのです。
建設業は、SDGs 持続可能な社会を支える根幹です。インフラの整備とSDGsの理念を結び付ける視点は、これからの建設業の進化に欠かせない視座といえるでしょう。
持続可能なインフラとは何か?変わりゆく建設業のかたち
インフラの老朽化と再構築の必要性
先述した通り、日本各地に張り巡らされたインフラ、たとえば道路、橋梁、上下水道、トンネルといった社会基盤の多くは、高度経済成長期に集中的に整備されたものです。
それらは今、築50年以上を超えるものが急増し、深刻な老朽化が進行しています。インフラは一度造れば永久に使えるわけではなく、定期的な点検と修繕、そして必要に応じた更新が不可欠です。
こうした現実を前にして、単なる「維持管理」ではなく「持続可能なインフラ」への移行が求められています。つまり、将来にわたり安全に使い続けられ、環境や地域社会との調和も意識したインフラづくりが必要なのです。
「持続可能なインフラ」とはどんなものか
では、具体的に「持続可能なインフラ」とは何を指すのでしょうか。単に長持ちすることにとどまらず、以下のような複数の視点を含んでいます。
- 環境に配慮した設計:自然環境の破壊を最小限に抑え、エネルギー効率の高い設計を採用する。
- 再生可能な材料の使用:再生材や地産地消の資材などを積極的に取り入れる。
- ライフサイクルコストの最適化:建築から運用・廃棄までのコストと環境負荷を考慮し、効率化を図る。
- 災害に強い構造:気候変動の影響を踏まえた防災・減災機能を備える。
- 誰もが使いやすい設計:バリアフリーやユニバーサルデザインに配慮し、地域住民に開かれた公共性の高い施設を目指す。
このような取り組みは、SDGsが掲げる持続可能な開発の目標と一致しており、建設業が「インフラを通じて社会課題を解決する存在」として再定義されつつあります。
デジタル技術と建設業の融合で進化するインフラ整備
今、建設業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて、これまでにない革新が進んでいます。
特に「BIM(Building Information Modeling)」や「CIM(Construction Information Modeling)」といった3Dデータを活用した設計・施工管理は、建設業のプロセス全体の効率化や可視化を実現します。
また、ドローンやセンサーによるインフラの点検・監視、自動運転やロボット施工の導入なども進みつつあり、持続可能性だけでなく、建設業の現場の安全性や人材不足の解消にも貢献しています。
こうした技術革新は、建設業を“従来型のものづくり産業”から、“社会の課題解決産業”へと変化させる原動力となっているのです。
持続可能なインフラを育てるための視点
インフラは「造って終わり」ではありません。社会に根づき、使われ続けるなかで初めてその価値が生まれます。だからこそ、作る時だけでなく、運用・維持管理の段階でも持続可能性を意識することが重要です。
さらに、地域住民との対話も大切です。
インフラというのは、ただ地域に“置かれる”ものではなく、そこに暮らす人びとが日々使いながら、ときには支え合い、手をかけて守っていく。そんな“共に育てる存在”であるべきだと思います。
持続可能なインフラとは、最新の技術や堅牢な構造に加え、人と人とのつながりや地域社会との関係性といった要素も含んでいます。それは、機能的な社会資本であると同時に、地域の営みや暮らしの流れの中に自然と溶け込むような、しなやかで開かれた存在なのです。
人材不足と建設業の未来
建設業を直撃する「人手不足」の現実
建設業は今、深刻な人材不足の渦中にあります。
国土交通省の調査によると、建設業に従事する技能労働者の平均年齢は50歳を超え、若年層の新規参入が極端に少ない状況です。かつては「手に職を」と多くの若者が集まった業界でしたが、現在は3K(きつい・汚い・危険)のイメージや長時間労働の実態が敬遠され、働き手が激減しています。
とりわけ、地方や中小企業においては人材の確保が難しく、工事の受注そのものを断念せざるを得ないケースも珍しくありません。このままでは、インフラ整備どころか、災害復旧すら遅れかねない非常事態です。
技術革新で補う「少ない人手でできる建設業」
こうした人材不足への対策として、業界内では急速に技術革新が進められています。特に注目されているのが、ICT(情報通信技術)を活用した「i-Construction」や自動化・省人化を目指すロボットの導入です。
たとえば、ドローンを使った測量や点検、3Dスキャナによる施工管理、AIによる工程最適化など、従来は熟練作業者が担っていた部分を機械が代替する場面が増えています。これにより、現場の作業効率が大幅に向上し、少ない人数でも質の高い作業が可能となってきています。
さらに、遠隔操作による重機の運用や、仮想現実(VR)を使った安全教育なども活用され、人材育成や安全管理の分野にも革新が広がっています。
「建設業の未来」を担う人をどう育てるか
とはいえ、機械やAIがどれだけ進化しても、現場を支えるのは最終的には「人の力」です。つまり、SDGs 持続可能な建設業の未来には、“人を育てる”視点が欠かせません。
そのために必要なのは、まず働き方の改革です。週休二日制の導入や残業削減、福利厚生の充実によって、建設業を「選ばれる職業」へと変えていく努力が求められています。国や業界団体もこの流れを支援しており、若手や女性、高齢者の参入促進が徐々に進みつつあります。
また、SDGsの視点から見れば、「誰一人取り残さない」包摂的な雇用の実現も建設業に課されたテーマです。たとえば、障がい者雇用の促進や、外国人技能実習生への適正な対応もまた、持続可能性を支える大切な一歩といえるでしょう。
「魅せる建設業」へと変化するチャンス
現在の課題は裏を返せば、変革のチャンスでもあります。
たとえば、最新技術とサステナビリティを組み合わせたプロジェクトに参加できることは、若者にとって大きな魅力です。都市の再生や災害復旧など、“社会の役に立つ”という実感を得られる職種として、建設業の本質をしっかりと伝えていく必要があります。
未来の建設業は、インフラ整備だけでなく、社会課題の解決に寄与する「誇りある仕事」へと進化しています。人材不足の現実に正面から向き合い、技術と教育で未来を切り拓くことが、今この時代の建設業に求められているのです。
建設業の未来と持続可能な社会の実現に向けて
持続可能性が建設業の常識になる時代へ
今、建設業は過渡期にあります。高度経済成長期のように、ただ数をこなしてつくる時代は終わりを迎え、いかに「持続可能性」を軸に社会に貢献するかが問われるようになりました。これまで以上に、インフラの設計や施工、維持管理において「環境に優しく」「人にやさしく」「地域に根ざす」という姿勢が求められています。
SDGsが社会のあらゆる分野で共通言語となった今、建設業も例外ではありません。むしろ、インフラを通じて暮らしを支える建設業こそが、その中心に立つべき存在なのです。目標11「住み続けられるまちづくり」や目標13「気候変動への対策」など、SDGsの具体目標と建設業の仕事は、驚くほど重なり合っています。
今後は、SDGsを「対応すべき目標」ではなく、「日々の業務のなかにある当たり前」として捉える感覚が、現場レベルにも広がっていくことが重要です。
環境×経済×人をつなぐ建設業の進化
これからの建設業に求められるのは、単一の成果だけではありません。
高品質な構造物を提供することに加えて、環境への負荷を抑え、地域経済に貢献し、働く人の成長や働きがいにも目を向ける――そんな「複合的な価値の創造」が問われる時代です。
たとえば、再生材や地元産資材を用いた環境配慮型インフラ、地域住民と共につくるコミュニティ再生プロジェクト、女性や若手を育てるダイバーシティ推進現場などは、まさにSDGsの視点を反映した建設業の新しい形といえるでしょう。
これらの試みは一見するとコストがかかるように思えるかもしれません。しかし長い目で見れば、それは地域との信頼関係や企業ブランド、持続的な人材確保といった「目に見えない資産」を生み出す投資でもあります。
建設業は、モノづくりを超えて、ヒト・マチ・ミライをつなぐ産業へと進化しつつあるのです。
インフラが支える豊かな未来社会
社会インフラは、道路や橋、上下水道といった物理的な設備にとどまらず、人々が安心して暮らし、移動し、働き、学べる環境そのものを支えています。少子高齢化、気候変動、地域格差など、日本が直面する多くの課題に対し、インフラは“見えない防波堤”としてその影響を緩和する重要な存在です。
その整備と維持を担う建設業は、まさに社会の未来を形づくる仕事と言っても過言ではありません。将来世代に何を残し、どのような社会基盤を築いていくのか――その問いに真正面から向き合う覚悟と責任が、今、求められています。
SDGsという世界的な指針のもと、インフラ整備を通じて持続可能な社会の実現に貢献する建設業の価値は、今後ますます高まっていくでしょう。その歩みが、次の世代の豊かな暮らしへとつながっていくことを願ってやみません。
まとめ
かつて「つくって終わり」だった建設業は、今や「未来を育てる産業」へと進化を求められています。インフラは目に見える構造物ですが、その背景には地域の暮らしや地球環境、次世代の安心がつながっています。SDGsの視点を取り入れるということは、単なる社会貢献ではなく、自らの仕事の意味を問い直すことでもあります。
持続可能な建設業を実現するには、現場の技術、経営の意思決定、政策の後押し、そして市民との対話――そのすべてが連携して機能しなければなりません。そしてそれを可能にするのが、SDGsという“共通言語”なのです。
変化の時代にあっても、変わらないのは「人々の暮らしを支える」という建設業の本質です。だからこそ、インフラを担う者として、持続可能な社会づくりに誠実に向き合うことが求められています。社会の声に耳を傾け、環境に配慮し、次の世代に誇れる仕事を。それが、SDGs時代に生きる建設業の新たな使命なのではないでしょうか。
SSFホールディングスでは、透明性ある経営と持続可能な成長を追求し、社会課題を解決する活動を続けています。今後も、SDGsを意識した持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。




