COLUMN
#土木インフラの仕組み

道路・上下水道・橋はどう作る?土木インフラの仕組み
2025.6.17
目次
私たちの日常で普通に使っている道路や水道、橋。
これらは「インフラ」と呼ばれ、私たちの生活や経済を支えるてくれる大事なものです。
でも、それがどうやって作られているのか知っていますか?
きっと、あまり知らない、考えたこともなかった、という人が多いのではないでしょうか。
このコラムでは、土木インフラとはなにか、道路や上下水道、橋といったインフラがどう作られているのか、その仕組みや工事の流れをわかりやすく紹介します。

私たちの暮らしを支える「土木インフラ」とは
当たり前の日常を支える土木
朝起きて水で顔を洗ったり、電車や車で移動したり、夜には明かりのついた家で過ごす。
こうした何気ない毎日は、土木インフラのおかげで成り立っています。
普段はあまり意識しませんが、私たちが毎日使っている道路や橋、上下水道、トンネル、鉄道、ダムなどは、すべて土木の仕事によって整備されています。
「土木」とは、土地を整えて社会を動かすための技術や工事のことを指します。
建物を建てる前に地盤を固めることも、雨の日でも道路が冠水しないよう排水路を整えることも、すべてが土木の仕事です。
まさに私たちの暮らしを根本から支える存在といえます。
インフラとは?その役割と重要性
そもそも「インフラ」とは何を指すのでしょうか。
「インフラ」は英語のinfrastructure(インフラストラクチャー)の略で、一般的に「下部構造」や「基盤」を意味する言葉です。
その名前の通り、目には見えにくいけど社会の根底にあるものとして捉えることができます。
たとえば、交通インフラ(道路・鉄道・空港)、水インフラ(上水道・下水道・ダム)、エネルギーインフラ(電気・ガス)、そして通信インフラ(光ケーブル・携帯基地局)などがあります。
これらが少しでも止まると、交通が混乱したり、水が使えなくなったり、通信が途絶えたりと、暮らしに大きな影響が出ます。
つまりインフラは、単なる設備ではなく生活そのものと密接に関わっているのです。
地域や経済も支える土木インフラ
インフラは生活の便利さだけでなく、地域の発展や経済活動にも大きな影響を与えています。
たとえば、高速道路や港湾、農業のための用水路やダムなどの土木インフラは産業を支える大切な役割を果たしてくれています。
また、最近は自然災害が増えているので、災害に強いインフラの整備が求められています。
耐震性のある橋や、大雨や集中豪雨でも機能する排水設備など、安全を守る「防災インフラ」としての役割も大きくなってきています。
道路はどう作る?
道路整備の基本
新しく道路をつくるというのは、単にアスファルトを敷くだけの話ではありません。
そこには多くの工程と調整が必要で、時間も人手もかかります。
まず行われるのが「調査」と「計画」です。
どんな地形なのか、地盤は安定しているか、雨が降ったときに排水しやすい場所かどうか――こうした自然環境に関する情報を細かく確認します。
同時に、現在の交通量や将来的な人口の推移、周辺の生活環境や商業施設の有無といった社会的な条件もチェックされます。
それらを踏まえて、最も安全で効率的、かつ住民の生活に配慮したルートや構造が検討されていきます。設計図が完成すると、次は土地の取得が必要です。土地の権利関係を整理し、必要があれば買収交渉も行われます。また、地域住民への説明会を通じて理解を得ることや、周囲の自然環境に与える影響を評価することも重要なステップです。
これらすべてを経て、ようやく工事に着手できるのです。目に見える舗装作業の裏側には、想像以上に多くの準備と配慮が隠れているのです。
道路の構造と舗装の種類
道路は表面のアスファルトだけで成り立っているわけではありません。
地盤の上に「路床(ろしょう)」「路盤(ろばん)」「基層(きそう)」「表層(ひょうそう)」と何層にも重ねて構築されています。そして、それぞれに役割があります。
舗装にはアスファルト舗装とコンクリート舗装があります。
日本では維持管理や柔軟性の面でアスファルトが一般的になっています。
道路工事の施工工程
実際の工事では、まずは施工予定地の地形を整えることからスタートします。
土を削ったり(切土)、盛ったり(盛土)して地形を整えていきます。地盤が不安定な場所では、必要に応じて擁壁を設置したり、雨水がたまらないように排水設備を設置します。
その後、路盤材を重ねて固め、アスファルトやコンクリートを舗装材として重ねていきます。
舗装が完了したら、白泉やセンターラインを引き、横断歩道や矢印などの表示を塗装していきます。交通標識や信号の設置、ガードレールなどの設置しもこのタイミングで行います。
こうして、普段私たちがよく使う道路が完成します。
見た目以上に、道路を作るためには、細かな工程が積み重ねられているのです。
上下水道はどう作られる?
上下水道工事の基本
私たちの生活に欠かせない水。
蛇口をひねれば水がでてきて、使った水はどこかに流れていく。そんな当たり前の便利さを支えているのが上下水道インフラです。
水道は、「上水道」と「下水道」の2種類にわかれます。
まずは「上水道」。上水道とは、一般的には、飲むための水や、生活のために必要な水などを届ける仕組みのことです。
つぎに「下水道」。下水道とは、使用した水(生活排水や雨水など)が集まり、下水処理場へと運ぶ仕組みのことを指します。
こうした上下水道が整っていなければ、生活の利便性はもちろん、衛生面にも大きな影響が出てしまいます。上下水道工事とは、これらのネットワークを新たに整備したり、老朽化した設備を修繕したりする、まさに生活基盤を支える大切な工事なのです。
上下水道の構造と配管の種類
地面の下には、私たちが普段意識しないほど膨大なインフラ設備が存在します。上下水道の管路もその一つです。
上水道に使用される管には、ステンレス製やダクタイル鋳鉄管、ポリエチレン管などがあります。水圧に強く、サビにくい素材が選ばれ、衛生面への配慮も欠かせません。
下水道の配管では、主にコンクリート製や塩化ビニル製の管が使われます。特に、マンホールへつながる管は大型で、土砂や異物の流入にも耐えられる構造が求められます。
また、水道管の設置場所や深さにも意味があります。寒冷地では凍結防止のため、より深く掘られて配管されますし、道路や建物下にある場合は、耐荷重性も重視されます。設置後の地盤沈下や老朽化による漏水を防ぐため、継手(ジョイント)の接続精度も極めて重要です。
上下水道工事の施工工程
では、実際の工事はどのように進められるのでしょうか。
道路工事同様、まずは事前調査からスタートします。
既存の配管情報、地質の状態、交通量、周囲の建物など、さまざまな要素を調べたうえで、設計図が作成されます。
近年では3Dモデルを使ったBIM/CIM技術の導入も進んでおり、より精度の高い施工計画が可能になっています。
次に行われるのが掘削工事です。
重機を使って道路や地面を掘り下げ、配管を設置するスペースを確保します。掘削が終わると、給水管や排水管を所定の位置に敷設します。設置の際には、水平・傾斜の調整をしながら、漏れや詰まりのない流れを確保します。
配管の設置が完了すると、試験通水や耐圧試験などの検査が行われ、問題がなければ埋戻し作業へと移ります。最後に、舗装を元に戻し、道路や歩道の整備を行って完了です。
上下水道工事は、通行止めや交通規制が伴うケースも多く、周辺住民への配慮も非常に重要です。
夜間工事や仮設水道の設置、丁寧な広報活動によって、生活への影響をできる限り少なくする工夫が求められています。
橋はどう作る?目に見えない支えと技術の積み重ね
橋の工事の基本
橋の工事は、「橋梁工事(きょうりょうこうじ)」と呼ばれています。
橋梁工事には、新しく橋を建設するだけでなく、既存の橋の改修工事や古くなった橋を撤去する工事まで幅広く含まれています。
橋梁工事では、一般的な土木工事と異なり、空中や水中での作業が含まれることが多くあります。そのため、仮設構造物(仮橋や足場など)を活用しながら施工が行われます。さらに、高所の作業や大型構造物の吊り上げなど、特殊な重機や技術が必要な場面が多く、工事の難易度は非常に高いといわれています。
橋の種類
一言で橋といっても、様々な種類があります。
代表的な3つの橋をあげてみましょう。
- 桁橋(けたばし):橋桁によって橋面を支える構造です。短い距離に適しています。
- アーチ橋(あーちきょう):アーチの形をした構造で支える構造です。古くから使われている構造で、見た目の美しさ・強度が特徴です。
- 斜張橋(しゃちょうきょう):主塔から斜めに張られた複数のケーブルで橋桁を支えます。中距離から長距離の橋によく利用されます。
ここで上げた以外にも、トラス橋、ラーメン橋、吊り橋など様々な種類の橋があります。それぞれの橋には、荷重を分散させたり、風や地震への耐性を高めたりといった工夫が込められています。これらの橋は、地形や目的に応じて、使い分けられています。
橋梁工事の流れ
橋づくりは、「設計→基礎工事→下部構造→上部構造→仕上げ・舗装」という流れで進んでいきます。
まずは、橋を架ける場所の状態や条件を考え、どのような橋をかけるか構造を決めます。
その後、基礎工事で、川底や地中に杭を深く打ち込み、橋を支えるための土台をつくります。見えない場所で行われるこの作業は、橋の耐久性を左右する重要な工程です。
次に、橋脚や橋台などの基礎の上に、橋脚や橋台を建てる下部構造を構築します。
上部構造は、現場で組み立てる「現場打ち」や、あらかじめ工場で製作した部材を組み立てる「プレキャスト方式」などがあります。
安全性と精度が求められるため、ミリ単位での調整も行われることがあります。
橋は景観も支えるーデザイン性と隠れた工夫
橋は、単に人や車を通す構造物ではありません。
近年では、橋自体が観光資源となるような、デザイン性の高い橋も増えてきました。
ライトアップや曲線美、橋の下に広がる風景との調和など、「魅せる橋」が街のランドマークとなる例もあります。
また、橋の表面だけでなく、排水設計や伸縮装置、点検用の通路といった、利用者には見えない細かな工夫も随所に施されています。こうした要素が橋の寿命を延ばし、安全を守っているのです。
土木インフラが社会に与える影響
道路、橋、ダム、上下水道、……。
これらすべてに共通するのは、人々の暮らしの「土台」であるということです。
土木インフラはただの構造物ではなく、安全、経済、文化、そして未来をつくる大切な存在です。代表的な土木インフラの工事物の作り方をみてきましたが、ここでは、インフラが社会に与えている影響をさまざまな視点から見ていきましょう。
防災・減災とインフラ整備
日本は、地震、台風、大雨、土砂災害など、自然災害のリスクが高い国です。
そのため、インフラには日常的な利便性だけでなく、非常時に人命や財産を守る機能も求められます。
たとえば、川沿いに築かれた堤防は、増水による氾濫を防ぎます。
都市部では、ゲリラ豪雨などに対応するための調整池や地下放水路が整備され、雨水を一時的に貯めてゆっくりと放流する役割を果たします。
また、橋や高架道路の耐震補強は、地震の際に交通を確保する命綱とも言える存在です。
近年では「防災」よりもさらに一歩進んだ「減災」という考え方が土木の現場に浸透しつつあります。すべての災害を防ぐことは難しくても、その被害を小さく抑えるために、インフラのあり方を根本から見直す動きが広がっています。
たとえば、津波避難ビルの指定や、無電柱化による道路の安全性向上、住民の避難行動を支援する地形表示などもその一環です。
防災とインフラは切り離せない関係であり、人びとの命や暮らしの安全を静かに支える存在なのです。
インフラ老朽化と更新の課題
現在、日本全国で使われているインフラの多くは、高度経済成長期に一斉に整備されたものです。あの時代に建設された橋、水道管、トンネルなどは、すでに50年以上が経過しているものが珍しくありません。
橋のひび割れ、水道管の破裂、道路の陥没――これらはインフラの“老朽化”によって起きる事故の一例です。
特に地方では、人口減少に伴い税収も減り、補修や更新の予算を十分に確保できないという深刻な課題があります。
では、すべてを新しく作り直せばいいのかというと、現実はそう単純ではありません。コスト、工期、周辺環境への影響など、さまざまな要素を考慮しながら「どこを、いつ、どう直すか」を決める必要があります。
そこで注目されているのが、点検・診断の高度化や、ICT・AI技術による維持管理の導入です。ドローンやセンサーを活用し、日常的に構造物の健康状態を把握することで、必要なタイミングで効率的なメンテナンスが可能になります。限られた資源と人手を最大限に活かすためにも、これからの土木インフラには「賢い管理」が欠かせません。
地域経済や観光との関わり
道路が一本できるだけで、地域の風景は大きく変わることがあります。
たとえば、山間部にトンネルが通れば、都市部からのアクセスが格段に向上し、観光客が訪れやすくなります。農産物や工業製品の輸送コストも下がり、地域経済の活性化にもつながります。
また、新たに整備された道沿いには、道の駅や観光施設、宿泊施設などが自然と集まり、新たなにぎわいが生まれます。これはまさに「インフラがまちづくりの核になる」例です。
一方、インフラが老朽化し、放置されれば逆にまちの魅力が損なわれ、若い世代の定住や企業の進出も見込めなくなります。そのため、自治体や地域住民が主体となって「どのような未来を描くか」を話し合い、必要なインフラ投資を行うことがますます重要になってきています。
インフラ整備とは単に物理的な建設ではなく、「地域の未来を形にする作業」と言い換えてもいいかもしれません。
日常と未来を支えるインフラという存在
普段はあまり意識されることのない土木インフラですが、その存在なしに私たちの暮らしは成り立ちません。道路を走れるのも、水が使えるのも、災害に備えられるのも、すべては目に見えない努力と技術の上に成り立っています。
これからの時代は、作るだけではなく「使い続ける」ことが求められる時代です。いかに持続可能で、かつ安全なインフラを保ち続けるか。社会全体で支えていく仕組みづくりも、土木の未来に欠かせないテーマになっていくでしょう。
まとめ
私たちが毎日のように使っている道路や橋、何気なく使っている水道。こうした土木インフラは、当たり前のように存在しているようでいて、実は非常に多くの人の知恵と努力、そして時間をかけてつくられたものです。
その裏側には、地道で緻密な土木の技術が息づいており、見えないところで私たちの暮らしをしっかりと支えています。
「どうやって道路は作るの?」「上下水道ってどう通っているの?」といった素朴な疑問をきっかけに、その構造や背景を深く知っていくと、土木が単なるモノづくりではないことに気づかされます。
自然と人間社会の間をとりもち、安全や快適さを陰で支え、時には災害から命を守るという重要な役割を担っているのです。
土木インフラは、単に生活を便利にする施設ではありません。
人と人、まちとまち、そして今と未来を静かにつないでくれるものでもあるのです。普段は意識されることのないその価値に、ふと目を向けてみてみませんか?
改めて気づくことがたくさんあるかもしれません。
SSFホールディングスの能力開発校ADSでは、次世代の土木技術者を育成します。現場で活躍できる人材の輩出を通じて、業界全体の発展に貢献いたします。 職場見学も受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。




