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上水道と下水道 配管の違いは?上下水道の施工方法と工事内容を比較

上水道と下水道 配管の違いは?上下水道の施工方法と工事内容を比較

私たちの暮らしに欠かせない水道設備は、大きく「上水道」と「下水道」に分かれています。上水道は安全な飲料水や生活用水を家庭や施設へ送り届け、下水道は使用済みの水や雨水を集めて処理場へ運びます。一見すると同じ配管のように思えるかもしれませんが、その役割構造施工方法には明確な違いがあります。たとえば上水道は清潔さと水圧を保つ設計が必要で、下水道は耐久性と排水効率を重視します。

本コラムでは、上下水道の配管の違いを整理し、実際の工事手順施工方法を比較しながら、私たちの足元で日々行われている上下水道整備の実態をわかりやすく解説します。

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上水道と下水道の基本構造と役割

上水道とは

上水道は、河川やダム、地下水などから取水した水を浄水場で処理し、安全でおいしい水として各家庭や事業所に届けるための設備です。
配管は耐圧性と耐腐食性に優れた鋼管ダクタイル鋳鉄管ポリエチレン管などが使われます。施工では水質を保つための衛生管理が重要で、工事中も土砂や異物の混入を防ぐ厳格なルールがあります。日常生活では目に見えませんが、蛇口をひねると水が出る当たり前の光景は、この上水道配管があってこそ実現しています。

下水道とは

下水道は、生活排水や工場排水、雨水を集め、浄化センターや処理場へ送るための設備です。配管には耐摩耗性や耐薬品性が求められ、コンクリート管塩化ビニル管などが使われます。流れは重力を利用するため、勾配を設けて設置されるのが一般的です。工事の際には既存の道路や建物の下を通すことも多く、施工計画には慎重な検討が欠かせません。

上下水道の役割の違い

上水道下水道の最大の違いは、水の性質と流れの方向です。上水道は清浄な水を圧力で送り、下水道は汚水や雨水を自然勾配で排出します。また、衛生面の基準や配管材の選び方も異なります。どちらも地域の衛生と生活基盤を守る重要なインフラであり、その違いを理解することは、工事維持管理の計画において不可欠です。

上水道下水道は、それぞれの役割に応じたネットワークを全国に張り巡らせています。
たとえば上水道は、山間部の水源地から都市部まで数十キロにわたる送水管を通して水を送り、途中で複数の配水池を経由します。一方、下水道は街中のマンホールから地下深くの幹線管に接続され、最終的には処理施設まで流れます。現場では、このルート設計が上水道と下水道でまったく異なるため、工事の準備段階から施工内容の違いを細かく調整する必要があります

上水道と下水道の配管の違い

 配管径・材質の違い

上水道の配管は、水圧に耐えられるよう肉厚で丈夫な鋼管ダクタイル鋳鉄管、近年では軽量で耐食性に優れるポリエチレン管も多く使われます水質保持のため、内面には特殊なライニングを施すこともあります。

一方、下水道は生活排水や雨水を流すため、耐摩耗性と耐薬品性が求められます。コンクリート管や塩化ビニル管、陶管などが選ばれ、内部には油脂や砂、化学物質が通るため腐食摩耗対策が不可欠です。この材質選びの違いは、設計段階から工事完了後の維持管理まで影響します。

設置深さ・勾配の違い

上水道ポンプによる圧送を行うため、比較的浅い位置に配管しても安定した供給が可能です。道路の舗装下や歩道下に沿って配され、メンテナンスしやすい位置に設計されます。
下水道重力による自然流下方式が基本で、勾配を確保するため上水道より深い位置に配管されることが多いです。特に大口径の幹線管路では、深さ数メートルに及ぶ掘削が必要で、工事期間コストにも大きく影響します。

維持管理・点検方法の違い

上水道水質検査漏水調査が主な維持管理業務です。夜間の水圧変動を測定して漏水箇所を推定する方法や、音聴棒による漏水音の確認など、精密な点検が行われます。
下水道では管内カメラによる内面検査や、高圧洗浄車を用いた詰まりの除去が中心です。悪臭や害虫の発生を防ぐため、定期的な清掃や補修が必要となります。この維持管理方法の違いを理解しておくことは、工事計画や更新時期の判断にもつながります

材質や口径だけでなく、地盤条件も施工違いを生みます。たとえば軟弱地盤では、上水道は漏水リスクを防ぐため可とう性のある管を選びますが、下水道は沈下による勾配変化を避けるため剛性の高い管を用いることが多いです。また、寒冷地では上水道は凍結防止のため深めに配管し、下水道は排水の流れを確保するため保温材や流速管理を行います。このように、気候や地域特性が工事方法に直接影響を与えます

上水道の施工方法と工事内容

上水道工事の流れ

上水道の新設や更新の工事は、まず設計段階から始まります。
地形や既存配管の位置、周辺の下水道管との違いを確認しながら、配管ルートや口径を決定します。その後、道路や歩道を掘削し、既定の深さまで到達したら基礎となる砂や砕石を敷き、配管を設置します。配管同士の接合には耐震性の高い継手を使用し、漏水防止のためのゴムパッキンやライニング加工も施されます。設置後は水圧試験水質試験を実施し、安全性を確認してから埋め戻しと舗装復旧を行います。

使用する工法と機械

上水道の配管工事では、主に開削工法が用いられます。道路を直接掘り下げるため施工状況が把握しやすく、接続や修理もしやすいのが特徴です

ただし、交通規制や周辺への影響を抑える必要があります。狭い道路や交通量の多い場所では、地面を掘り返さずに配管を通す推進工法を採用する場合もあります。掘削には油圧ショベルやバックホウが使われ、配管の吊り込みや接続にはクレーン車や専用治具が欠かせません。

工事の注意点

上水道工事では、施工中に配管内へ異物が入り込まないよう衛生管理を徹底します。特に下水道工事と同時進行する現場では、資材や工具の使い回しによる汚染を防ぐための作業区分けが重要です。また、断水の影響を最小限に抑えるため、夜間休日に作業を行うことも多く、事前の広報や近隣住民への説明が欠かせません。さらに、耐震継手や柔軟性のある材質を選定することで、地震時の断水リスクを低減できます。

上水道工事では、周囲の交通や生活への配慮が不可欠です。住宅地では作業時間を制限し、商業地では営業時間外に作業を行うなど、現場ごとに柔軟な対応が求められます。加えて、既存の下水道管やガス管との交差部では、配管高さや防護措置の調整が必要です。こうした現場調整は一見地味ですが、事故を防ぎ、円滑な工事進行を支える重要な要素です。

下水道の施工方法と工事内容

下水道工事の流れ

下水道新設改修工事も、まず調査と設計から始まります。地形や既存配管の位置を確認し、上水道のルートや設備との違いを考慮して計画を立てます。設計では雨水管や汚水管の口径、勾配、材質を決定します。

施工段階では道路や敷地を掘削し、所定の深さと勾配を確保したうえで基礎材を敷き、管を敷設します。接合部は漏れやずれを防ぐためゴム輪やモルタルを使用し、設置後は通水試験やカメラ調査を行い、正常な排水が確認できてから埋め戻し・舗装復旧を行います。

工法の種類

下水道配管工事は、開削工法非開削工法に大別されます。開削工法は地面を直接掘り下げる一般的な方法で、施工状況を目視で確認できる利点があります。一方、交通量の多い道路や深度の深い配管敷設では、非開削工法が有効です。代表的なものにはシールド工法推進工法があり、地表を大きく掘らずに配管を通せます。これにより周辺交通や生活環境への影響を抑えつつ、安全な施工が可能になります。工法選定は、上水道配管の位置や土質条件との違いを見極めたうえで行われます。

工事の注意点

下水道工事では、衛生面安全面の管理が重要です。管路内には汚水やガスが溜まることがあり、作業員の安全確保のため換気やガス濃度測定を行います。
また、上水道と同時施工する場合は、交差部での汚染防止措置を徹底します。さらに、工事中の雨天時には現場に雨水が流れ込みやすく、泥水の処理や排水ポンプの運用が欠かせません。配管が深い位置にある現場では、土砂崩れを防ぐための山留め支保工の設置が求められます。こうした管理体制が整って初めて、下水道の安全で確実な施工が実現します。

下水道工事では、悪天候や突発的な地下水の湧出など、予期せぬ事態に備える必要があります。特に雨天時は工事箇所に雨水が流れ込み、掘削面が崩れる危険があるため、仮設排水路やポンプの常備が不可欠です。また、上水道下水道を同時に施工する場合、掘削順序や埋め戻しのタイミングを綿密に調整しなければなりません。現場では「下水道から先に施工するか、上水道を先に通すか」という判断が、工期やコストに大きな影響します。

上下水道工事の比較と特徴

施工条件の違い

上水道工事下水道工事では、目的や施工条件に明確な違いがあります。上水道は安全で清浄な水を安定供給するため、管路の耐圧性や水質保持が最優先です。

一方、下水道は生活排水や雨水を効率的に排出するため、耐摩耗性耐薬品性が重視されます。また、上水道はポンプによる圧送方式が多く、比較的浅い位置に配管されますが、下水道は自然流下を利用するため勾配を確保しつつ深く埋設されるのが一般的です。この深さの違いが、掘削規模や安全管理方法にも影響します

工期・費用の違い

工事規模や工法の選定も上下水道で大きく異なります。上水道工事は比較的短期間で終わる場合が多いですが、断水の影響を考慮して夜間や休日に作業を行うことが多く、調整作業に時間がかかる場合があります。下水道工事は大規模な掘削や非開削工法を伴うことが多く、工期が長期化する傾向にあります。費用面でも、管径が大きく深度も深い下水道は、上水道より施工費や維持管理費が高くなるケースが多いです。

事故やトラブル事例

上下水道の工事現場では、それぞれ特有のリスクがあります。上水道では漏水事故が発生すると水圧低下や断水につながり、生活や事業活動に直結します。原因は老朽化や継手部の不具合、地震による破損など多岐にわたります。

下水道では詰まりや破損による逆流・浸水被害があり、特に豪雨時には周辺地域に大きな影響を与えます。これらの事例は、施工時の品質管理や定期的な点検の重要性を改めて示しています。 比較の観点をさらに掘り下げると、季節要因も見えてきます。夏場は上水道工事では断水による生活影響が大きく、冬場は下水道工事で凍結や降雪による作業停滞が課題になります。
また、上水道は衛生管理のため施工後すぐに通水試験を行うのに対し、下水道は全区間がつながってから排水試験を行うため、試験工程のスケジュールにも違いが出ます。このように、表面上は似た作業でも、計画や管理の手法は大きく異なります

上下水道の維持管理と今後の課題

老朽化による更新需要

全国的に、上水道下水道の配管は高度経済成長期に敷設されたものが多く、今や耐用年数の50年を超える設備も少なくありません。老朽化が進むと、上水道では漏水や水圧低下、下水道では破損や浸水リスクが増大します。こうした状況は、配管更新工事の計画を急ぐ要因となります。
特に上水道は断水を避けるため、更新作業を分割・夜間施工するケースが多く、下水道は深掘削による安全対策や仮設排水路の設置が必要です。更新工事の難易度や工期には大きな違いがあり、自治体や事業者の計画にも影響します

新技術の導入

近年では、維持管理の効率化を目的にICTIoT技術が導入されています。

上水道では漏水監視センサーや遠隔操作バルブ下水道では管内カメラやAI解析による劣化診断が活用されています。これにより、異常が発生した際に迅速な対応が可能になり、不要な掘削工事を減らすこともできます。さらに、非開削工法の普及により、従来よりも短期間・低コストでの改修が可能となり、道路交通や周辺住民への影響も軽減されます

環境配慮と持続可能性

上下水道の整備では、環境負荷の低減も重要な課題です上水道では節水型設備雨水利用システムの導入が進められ、下水道では処理水の再利用や汚泥の資源化が行われています。また、更新工事で発生する廃材の再利用リサイクルも促進されており、資材選びや施工方法においても環境配慮が求められます。将来を見据えた上下水道の運営には、従来の「作って終わり」から「長く守り、再生する」発想への転換が不可欠です

維持管理の現場では、作業員が配管内部に直接入る場合と、機械やロボットを使用する場合があります。上水道は衛生上、作業員が内部に入ることはほとんどなく、外部から検査機器を挿入します一方、下水道は大口径管の場合、作業員が安全管理のもと内部に入り、亀裂や腐食の確認、補修を行うこともあります。この作業方法の違いは、必要な技能や資格、工事準備の手間にもつながります。今後は、こうした作業の省力化自動化が進むことで、安全性と効率性の両立が期待されています。

さらに、上下水道環境配慮は施工現場の工夫にも表れます。上水道工事では掘削土の再利用や資材輸送の効率化、下水道工事では騒音・振動の低減対策が重視されています。こうした小さな配慮が、住民の理解と協力を得る大きな要因となります。結果として、施工効率の向上や工期短縮にもつながり、長期的には維持管理コストの削減効果も期待できます

まとめ

上水道下水道は、いずれも私たちの暮らしを支える欠かせない社会インフラです。
しかし、その役割や構造、配管の条件、そして施工方法には明確な違いがあります。上水道は清浄な水を安全に供給するため、耐圧性や衛生管理を重視した設計・材質選びが行われます一方、下水道は生活排水や雨水を効率よく排出するため、耐摩耗性や耐薬品性に優れた配管や勾配設計が必要です。こうした特性の差は、工事の工法や使用する機械、施工期間や費用にも直結します。

また、両者とも老朽化対策災害時の機能確保といった維持管理の課題を抱えています。近年はICT非開削工法など新技術の導入により、効率化と環境配慮の両立が進んでいますが、現場では依然として細心の安全管理や計画的な更新が求められます。

日々当たり前のように使っている水道水排水システムも、その裏には膨大な計画と精密な施工が存在します。上水道と下水道の違いを理解することは、インフラの重要性を再認識し、将来にわたって安心・安全な生活を守る第一歩となるでしょう。

上下水道の違いを理解し、適切な工事計画維持管理を行うことは、地域の安全と快適な暮らしを守ることに直結します。市民や事業者、行政がそれぞれの役割を果たし、上水道と下水道の整備に継続的に取り組むことが、これからの持続可能な社会づくりの基盤となります。

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