COLUMN
#土木のキホン

土木の職種一覧|仕事内容・必要スキル・向いている人がわかる!
2025.7.3
目次
「土木の仕事ってどんな職種があるの?」
そんな疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。ひとことで「土木」と言っても、その中には多種多様な職種が存在します。道路や橋をつくる現場の仕事だけでなく、設計、点検、保守、そしてICTを活用した新しい分野の仕事まで、活躍の場は広がりを見せています。
本コラムでは、土木業界における代表的な職種を一覧形式で紹介し、それぞれの仕事内容や必要なスキル、どんな人が向いているのかを具体的に解説します。

土木業界の全体像と職種の多様性
土木の仕事とは何か?インフラを支える役割
私たちの日常には、当たり前のようにインフラが存在しています。でも、それらが「どうやってそこにあるのか」、意識することは少ないかもしれません。
実は、その背後には「土木」という大きな仕事の世界が広がっています。土木とは、道路や橋、河川や上下水道といったインフラをつくり、整え、そして守っていく仕事です。
こうした構造物を支えるのは、単なる技術ではありません。安全性、公共性、そして長く使われるための知恵と工夫。それらが合わさって、初めて土木の仕事は完成するといえるのです。
設計・施工・保守だけじゃない!土木の職種の広がり
「土木の職種」と聞いて、思い浮かぶのはどんな仕事でしょうか。ヘルメットをかぶって現場で作業している姿?重機を操作している人?
確かにそれも立派な土木職の一つ。でも、実際にはもっと幅広い職種が存在しています。
設計図を引く技術者、現場全体を指揮する施工管理職、構造物の点検を行うスペシャリスト、測量や地質調査のプロなど……。どの仕事にも専門性があり、それぞれがつながることで土木プロジェクトが進んでいきます。最近では、ICTやドローンを使った職種も登場しており、テクノロジーとの融合も加速中です。
公共事業とのつながりと土木職の社会的意義
もう一つ、土木の仕事を語るうえで欠かせないのが「公共性」です。多くの土木工事は、国や自治体などの公共事業として行われています。つまり、私たちが関わる土木職種のほとんどは、社会全体を対象とした仕事です。
たとえば、地域の道路改修工事に携わることで、地元の交通環境がよくなる。河川の整備に関われば、水害への備えが強くなる。そんなふうに、土木の仕事は「人の暮らし」に直結するのです。
そのため、働く側にも自然と責任感が育ちますし、何より誇りを持てる職種が多いのも土木業界の魅力のひとつといえるでしょう。
現場系職種 ― つくる・動かす仕事
土木施工管理技士:工事全体を指揮する中核職種
どんなに立派な構造物も、それをかたちにするには「現場」をまとめる存在が必要です。そこで登場するのが、土木施工管理技士という職種。
工事のスケジュールを管理したり、安全対策を徹底したり、現場のあちこちを動きながら、さまざまな人たちとやり取りする。言ってしまえば、現場の指揮官のような仕事です。
現場が思い通りに進まない日もあります。それでも最後まで全体を見渡して調整していく。そんな粘り強さや判断力が、この職種には求められます。現場で工事が無事に終わったとき、「ああ、自分の采配が活きたな」と思えること、それがやりがいです。
重機オペレーター:ダイナミックに「動かす」仕事
重機――ブルドーザーやショベルカー。大きな機械を操作して土を掘ったりならしたりする。子どものころ、ちょっとワクワクした人もいるのではないでしょうか?
そんな重機を自在に動かすのが、重機オペレーターという土木職です。
操作には免許が必要ですが、一度コツをつかめば、精密な動きができるようになります。どこにどれだけ掘るか、どうすれば安全に作業できるか。思った以上に頭を使う仕事でありながら、同時に“動かす喜び”もあります。
現場の中心で、実際に形をつくる。そんな実感を持てるのがこの職種の魅力でしょう。
測量士・測量士補:現場の“目”として空間を把握する
測量って、なんだか地味に思えるかもしれません。でも実は、どの土木工事もこの仕事がなければ始まりません。
土地の高さ、距離、傾き、位置関係――それらを正確に測り、図面と照合して「ここに道をつくる」「ここを掘る」と決める。それが測量士・測量士補という職種の役割です。
最近では、ドローンやGPS、3Dスキャンなどの新技術も使われるようになってきて、道具も仕事の進め方も大きく変わりつつあります。
この仕事に向いているのは、コツコツと丁寧に作業を進めるのが好きな人、そして“正確さ”に喜びを感じられる人かもしれません。
技術・設計系職種 ― 形にする・構造を考える仕事
構造設計技術者:安全な構造物を支える裏方の仕事
橋が落ちずにそこにあること。当たり前だと思っていませんか?
でも、それを「当たり前」にしているのが、構造設計という土木の仕事です。
特に、構造設計技術者という職種は、構造物が地震や風雨に耐えられるか、荷重に耐えられるかといった「裏側の強さ」を計算して設計します。
図面と向き合い、数値と格闘しながら「安全」を形にしていく。誰にも気づかれないけれど、もしこの仕事がなかったら、橋もトンネルも安心して通れません。
まさに“縁の下の力持ち”という言葉がぴったりの土木職です。
土木設計技師:構想を図面に変える、想像力の仕事
「こんな道があったら便利だな」「この川、もう少し安全にできないか」――そんな“もしも”を図面に描くのが、土木設計技師という職種の仕事です。CADと呼ばれる設計ソフトを使って、空間を計画し、形にしていきます。
この土木の仕事は、パソコン作業が多いとはいえ、現地を見ることも欠かせません。実際の地形や人の流れを理解しないと、いい設計はできないでしょう。
デスクに向かいながらも、想像力をはたらかせる。設計とは、実はとても創造的な土木職なのです。
地質調査技師:地中の「見えないリスク」と向き合う仕事
土木の工事で忘れてはいけないのが、“地面の中”です。いくら立派な設計ができても、地盤が弱ければ建物は支えられません。
そのための「目」となるのが、地質調査技師という職種。地中の構造や土質、水の状態などを調べ、どこにどう建てるかの判断材料を提供します。
ボーリング調査やサンプリングなど、作業は地道。でも、その一手が工事全体の成否を左右することもある、責任の重い仕事です。
「表に出るのは得意じゃないけれど、じっくりと大事な仕事がしたい」――そんな人には向いている土木職かもしれません。
維持・保守・点検系職種 ― “守る”ことで支える仕事
点検技術者:インフラの“今”を診る、静かなプロフェッショナル
橋の下やトンネルの奥、誰も見ない場所でコツコツと作業している人たちがいます。彼らの仕事は「点検」。名前だけ聞くと地味かもしれませんが、実はとても大事な土木の職種です。
たとえば、ひび割れひとつを見落とせば、それが事故につながる可能性もある。だから、点検技術者の目は常に真剣そのもの。
最近は、ドローンや赤外線カメラなどを使って点検する場面も増えていて、まさに“ハイテクな守り手”というイメージです。
静かだけど、確かな使命感に支えられた土木の仕事。それが点検の世界です。
維持管理スタッフ:何気ない“当たり前”を保つ仕事
毎朝通る道路に穴が空いていたら?
水があふれて流れなくなった排水路が放置されていたら?
そんな「ちょっと困るな」という場面を、見えないところで支えているのが、維持管理の仕事です。土木の世界では、こうした日常的な補修や清掃、除草作業を行う維持管理スタッフという職種が欠かせません。
決して派手な仕事ではありません。むしろ、目立たない。でも、だからこそ「ありがたみ」がわかる仕事でもあります。地域に住む人たちが困らないよう、今日もどこかで地道な作業が続いているのです。
インフラ長寿命化と“守る”職種の価値
今、日本のインフラは大きな転換期にあります。かつて高度成長期に建設された構造物が、次々と寿命を迎えつつある。これを“壊れるまで放っておく”のではなく、“壊れる前に守る”時代へと変わってきました。
だからこそ、点検や維持といった職種がこれからの土木業界ではますます重要になります。雨が降っても、地震があっても、生活に大きな支障が出ないのは、こうした仕事が日々、支えているからです。
華やかさよりも確実さを大事にする人には、ぴったりの土木職かもしれません。
企画・調整・発注系職種 ― プロジェクトの骨組みをつくる仕事
発注者支援業務:土木の「裏方」から支える仕事
道路やダムが完成するまでには、目に見えない段取りや調整がたくさんあります。たとえば、図面の確認、積算の作業、書類の準備――。
こうした工程を、行政の立場で技術的にサポートするのが「発注者支援業務」という土木職です。
民間の建設会社とは違い、この職種は役所などの発注者側で動くのが特徴。国や自治体が発注する工事に対して、技術的アドバイスをしたり、計画立案を支援したりします。
「現場に出るのはちょっと……」という人でも、事務的な側面から土木の世界に関われるのが、この仕事の魅力。まさに“縁の下の参謀”といった役割です。
施工計画担当:未来を描く土木プランナー
工事が始まる前に、すべての工程を見通して組み立てていく。これが「施工計画担当」という職種の仕事です。
資材はどこにいつ届くか? 作業員は何人必要か? どの工種がどこでどの順番で進むのか? そういったことを事前に計画しておくことで、現場がスムーズに動くのです。
この土木の仕事には、経験に裏打ちされた現場感覚が必要です。同時に、全体を見渡す冷静さと、ちょっとした想像力も求められます。
「こう進めれば、うまくいくはず」――そのプランニングが実際に形になると、やっぱりうれしいものです。
BIM・CIM推進者:ICTで土木をアップデートする仕事
最新の技術がどんどん入ってきているのが、いまの土木の現場。BIMやCIMといった3Dモデリングを活用した設計や管理が、今まさに広まりつつあります。
この分野で活躍するのが「BIM・CIM推進者」という職種です。
ドローンで現場を撮影し、その映像をもとに施工計画を立てる。センサーで取得した地形情報を3D化する。かつては想像の世界だったことが、いま現実の仕事として進んでいます。
この仕事には、土木とICTの両方に興味がある人がぴったり。ExcelやCADが得意な人、ゲーム感覚で空間を操作できる人にとっては、面白くてやりがいのある職種になるかもしれません。
土木職に向いている人のタイプとは?
「動きたい人」も「考えたい人」も、どちらも土木の世界に居場所がある
「土木の仕事って、体力勝負なんでしょ?」
たしかに、現場で汗をかく職種は多いです。でも、それだけじゃありません。
パソコンの前でじっくり設計に向き合う人もいれば、行政との調整に頭を使う人もいる。測量のように繊細な作業が好きな人もいれば、重機を豪快に操る人もいます。
つまり、“動きたい人”も“考えたい人”も、それぞれに合った職種があるのが土木の世界。自分の性格や得意なことを、どこかで活かせるかもしれない――そんな可能性が広がっています。
文系でもできる?意外とある土木の仕事
「土木=理系の世界」という印象、正直あると思います。でも実は、文系出身者が活躍できる土木職もあるのです。
たとえば、発注者支援や広報、現場調整といった仕事は、技術だけでなく文章力や対話力が活きる分野。むしろ“人と話すのが得意”な人ほど向いているケースもあります。
資格や図面の知識は、あとからでも学べます。それよりも「現場をまわす力」や「信頼を得る力」が求められる。だから文系出身でも、十分に勝負できるといえるでしょう。
女性・シニア・外国人…多様な人材が活躍する現場
ひと昔前までは、「土木=男の世界」という空気がありました。でも、もうそんな時代じゃありません。
女性の技術者も増えていますし、定年後も働き続けるベテラン、そして海外から来た技術者たちも、現場では当たり前の存在になってきました。
さらに最近は、現場の働き方も少しずつ変わってきています。時短勤務やICT導入など、無理なく続けられる工夫が広がっています。
「できない理由」ではなく、「どうすればできるか」を考える現場が、土木の世界にも増えているのです。
“好き”や“得意”を出発点にしていい
職種選びというと、「何が向いているか」「何ができるか」を真面目に考えがち。でも、ときには「ちょっと面白そう」「この仕事、好きかも」くらいの気持ちで始めてもいいのかもしれません。
土木の仕事は多種多様。自分にぴったりの職種を、最初から見つけられるとは限りません。でも、経験してみて「あ、これ合ってるな」と感じることが必ずあると思います。
だからこそ、まずは一歩踏み出してみること。向いてるかどうかは、そのあとでわかることかもしれません。
土木の仕事に必要な共通スキルとは?
土木の仕事は“チームプレー”が基本
土木の職種って、一人で黙々と進めるものだと思っていませんか? 実はその逆で、ほとんどの仕事がチームでの協力が前提です。
たとえば、施工現場では重機オペレーター、測量スタッフ、施工管理職が一斉に関わります。設計だって、発注者や地域住民との調整が欠かせません。
だからこそ、どんな職種でも「人とちゃんとやりとりできること」が大切です。大事なのは、きちんと伝える・聞く・確認するという基本の力。
地味ですが、この基本ができているだけで、現場では一目置かれます。
突発にも冷静に対応できる“柔軟さ”が生きる仕事
計画通りに物事が進む――それが理想ではあるけれど、現場はそんなに甘くはありません。雨が降る、部品が遅れる、予期せぬ問題が起きる……。そんなとき、どうするか。
このときに必要なのが「柔軟な対応力」と「切り替えの早さ」です。「今ある状況の中で、何ができるか?」を考えて、即座に判断する。
現場では、こうした“現場力”とも呼ばれるスキルがとても重視されます。
逆に言えば、予定外に強い人ほど、土木の仕事に向いているのかもしれません。
“資格”はあくまで道具。大事なのは「学ぶ姿勢」
土木業界では、職種ごとにいろいろな資格があります。施工管理技士、測量士、技術士など、名前を挙げればきりがありません。でも、大切なのは「資格を取ること」じゃなくて、「学び続けること」なんです。
現場も技術も日々変化しています。資格はその一部を証明するもの。だから取得後も、講習やOJT、勉強会などでスキルを更新していく人こそが、本当に頼れる土木技術者になっていくのだと思います。
まだ資格がないから不安…」という人も大丈夫。今は“学ぶ力”を持っていれば、十分にスタートできます。
未経験でも飛び込める職種はある
「土木って、何か特別な技術がないと無理なのでは?」――そう思う方もいるかもしれません。でも実際には、未経験からスタートできる仕事もたくさんあります。
たとえば、維持管理や補助的な測量作業、アシスタント的なポジションなどは、経験を積みながら一つひとつ覚えていける土木職です。企業によっては、資格取得のサポート制度があるところも多く、成長しやすい環境が整っています。
「最初は何もわからなかったけど、今では後輩に教えてる」――そんな声もよく聞きます。土木の仕事は、続けるほどに手応えが出てくる世界です。
まとめ
読み進めるうちに、「えっ、土木の仕事ってこんなに種類があるの?」と思われた方も多いかもしれません。実は、それくらい幅広く、奥行きのある分野なのです。
現場で汗をかく職種もあれば、設計やICTに特化した職種、人との調整を得意とする職種まで、土木の仕事にはさまざまなかたちがあります。それぞれが違うけれど、どれも社会の基盤を支える大切な存在です。
そして、未経験からでも挑戦できる職種もたくさんあります。学びながらステップアップしていける環境も整っています。「今の自分にできるだろうか」と迷ったときこそ、一度立ち止まって、自分に合う道を探してみてください。
SSFホールディングスの能力開発校ADSでは、次世代の土木技術者を育成します。現場で活躍できる人材の輩出を通じて、業界全体の発展に貢献いたします。 職場見学も受け付けておりますので、初心者・未経験の方もぜひお気軽にお問い合わせください。




