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舗装の種類とその違い|アスファルト舗装とコンクリート舗装の基礎知識
2025.7.18
目次
日常的に利用している道路や駐車場の地面――それらは「舗装」と呼ばれる土木構造物でできています。舗装は、私たちの暮らしや産業活動を支えるインフラのひとつであり、見た目以上に重要な役割を担っています。特に多く使われているのが、アスファルト舗装とコンクリート舗装の2種類です。見た目が似ていても、その構造や特性、使われ方には大きな違いがあります。
本コラムでは、これらの舗装の種類について、それぞれの特徴やメリット・デメリット、適した用途などをやさしく解説します。土木や建設に関心のある方だけでなく、道路や都市づくりに関わるすべての人に役立つ内容をお届けします。

舗装とは何か?その基本をおさえよう
舗装の役割とは?
道路や歩道、駐車場など、私たちが普段何気なく使っている場所の多くには、何らかの舗装の種類が施されています。一見同じように見える地面でも、その下には目的に応じた構造や種類があり、きちんと設計されたものなのです。
舗装の大きな役割は、交通をスムーズに、安全に保つこと。たとえば、雨が降ってもぬかるまないようにする、防塵・防音効果を持たせる、通行時の衝撃を緩和するなど、多くの性能が求められます。
そう考えると、舗装は単なる「地面」ではなく、都市の安全と快適さを支える重要な社会インフラであり、その種類によって、道路の性能や耐久性が大きく左右されることになります。だからこそ、場面ごとに適した舗装の種類を見極めて採用することがとても大切なのです。
舗装の構成と仕組み
舗装は、表面に見える部分だけでは成り立っていません。実は地中に向かっていくつもの層が重なり合っており、それぞれに異なる役割があります。そしてこの構造もまた、舗装の種類によって異なることがあります。
最上部の表層は、車や人が直接触れる場所で、耐久性や排水性が求められる重要な部分です。ここに使われる舗装材料には、アスファルト系やコンクリート系など、いくつかの種類が存在します。これらは用途や交通量、気象条件によって使い分けられます。
その下の基層や路盤も、荷重の分散や構造の安定に欠かせない存在で、それぞれの層に適した素材の種類があり、舗装全体の性能を左右します。さらに最下部にある路床は、自然の地盤との接点となり、全体をしっかりと支える役割を果たします。
このように、舗装は複数の層が一体となって機能しており、使われる材料や構造の種類によって耐久性・快適性・施工性が大きく変わるのです。だからこそ、ただ舗装するといっても、場所や用途に合った種類を選ぶ必要があるのです。
アスファルト舗装とは?特徴とメリット・デメリット
アスファルト舗装の基本と構造
日本で最も広く使われている舗装の種類といえば、やはりアスファルト舗装でしょう。黒くてなめらかな見た目が特徴で、街なかの道路から郊外の駐車場まで、さまざまな場所で目にすることができます。
この舗装は、砕石・砂・フィラー(鉱粉)といった骨材を、アスファルトという石油由来の結合材でまとめたアスファルト混合物を高温で加熱し、敷きならして圧縮することで作られます。冷えると固まり、硬い路面になりますが、ある程度の柔軟性も持ち合わせており、衝撃を吸収しやすいという特性があります。
実はアスファルト舗装にもいくつかの種類が存在します。代表的なものには、一般的な密粒度アスファルト混合物、雨天時に水を通しやすい透水性舗装、高速道路などで採用される排水性舗装などがあります。それぞれの種類は、求められる性能や用途に応じて使い分けられており、見た目では気づきにくい違いが多く存在しています。
このようにアスファルト舗装は、用途ごとに最適な種類を選定し、構造的にも工夫が施されている、柔軟性のある舗装形式のひとつです。
アスファルト舗装のメリットと使われる場所
アスファルト舗装が広く普及している理由のひとつは、施工のしやすさと速さです。加熱して柔らかくなった混合物はすぐに成形でき、冷めると短時間で固まるため、交通規制の時間を最小限に抑えることができます。夜間工事や短期の補修にも適しているため、特に都市部での利用が多く見られます。
さらに、アスファルト自体が持つ弾性により、車両の荷重を分散しやすく、走行時の衝撃や騒音をやわらげる効果もあります。こうした特徴は、居住エリアや通学路といった生活環境に配慮が求められる場所で、特に重宝されます。
また、修繕や再舗装が比較的簡単な点も見逃せません。既設の舗装の上に新しい舗装を重ねるオーバーレイなどの手法を使えば、アスファルトだけでなく一部のコンクリート舗装にも応用が可能です。これも、アスファルト舗装の種類の中にある柔軟性のひとつといえるでしょう。
このように、アスファルト舗装は「施工性・経済性・快適性」の3拍子そろった汎用性の高い種類の舗装であり、現代のインフラに欠かせない存在となっています。
アスファルト舗装の課題と保守のポイント
利点の多いアスファルト舗装ですが、当然ながら弱点もあります。特に顕著なのが、高温に対する弱さです。夏場の路面温度が60℃を超えるような状況では、柔らかくなって車のタイヤ跡が残る「わだち掘れ」が起こりやすくなります。
また、寒暖差が激しい地域では、収縮と膨張を繰り返すことでひび割れが生じやすくなります。こうしたひび割れが進行すると、雨水が路面下に入り込み、路盤や基層の劣化を招く恐れも出てきます。
だからこそ、アスファルト舗装には定期的なメンテナンスが重要です。軽度の損傷にはクラックシール材を使った補修が可能で、劣化が進んだ場合には部分的な打ち替えや、先ほど紹介したオーバーレイといった方法が取られます。
このように、アスファルト舗装は「施工しやすい種類」の舗装である一方で、維持管理を前提とした運用が求められる種類であるとも言えるでしょう。適切なタイミングでの補修が、舗装の寿命を左右する鍵になります。
コンクリート舗装とは?特性と利活用の場面
コンクリート舗装の基礎知識と施工法
アスファルト舗装と並ぶ主要な舗装の種類に、コンクリート舗装があります。こちらは、セメント・砂・砕石・水を混ぜてつくられるコンクリートを使用し、高い強度と長寿命を誇る舗装方式です。
この種類の舗装は、材料を型枠に流し込んで整形し、時間をかけて硬化させるという施工手順が基本となります。すぐに固まるアスファルトと比べて施工期間が長いという違いがありますが、そのぶん耐久性には優れています。
コンクリート舗装にもいくつかの種類が存在し、たとえば鉄筋を使わないプレーン型(無筋)や、補強材を加えた補強型(鉄筋入り)があります。交通量や設置環境に応じて、最適な種類が選ばれています。また、目地(継ぎ目)や滑り止め加工など、使用状況に合わせた細かな設計が必要となるのも、コンクリート舗装ならではの特徴です。
このように、コンクリート舗装は単一のものではなく、設計条件や強度の要求に応じて複数の種類が使い分けられているのです。
コンクリート舗装のメリットと適した用途
コンクリート舗装の最大の魅力は、何といってもその高い耐久性と長寿命にあります。条件にもよりますが、20年から30年以上の使用に耐えることもあり、舗装の中でも「長期使用を前提とした種類」として位置づけられます。
さらに、夏の炎天下でも変形しにくいという耐熱性も魅力のひとつです。アスファルト舗装では起きやすい「わだち掘れ」や軟化現象が起こりにくく、重車両が頻繁に通行する道路や施設でも安定した性能を発揮します。
また、コンクリートは表面が明るいため、夜間の視認性が高いという利点もあります。これは、交通事故のリスク軽減や照明設備の省エネ化にもつながるため、安全性と経済性を両立できる種類として注目されています。
そのため、コンクリート舗装は空港滑走路・交差点・高速道路・バスレーン・港湾施設など、過酷な条件下での使用が求められる場面に最適な専門性の高い舗装の種類として採用されています。
コンクリート舗装のデメリットと課題
一方で、コンクリート舗装にもいくつかの課題があります。そのひとつが、初期コストの高さです。材料費に加えて施工時間が長くなるため、全体の工事費用も大きくなる傾向があります。
また、コンクリートは一度固まると再加工が困難なため、補修や改修が難しい種類といえます。小規模なクラックなら目地材などで対応できますが、広範囲に及ぶ劣化や沈下が発生した場合、大がかりな再施工が必要になることもあります。
さらに、施工中に発生する騒音や、長い硬化期間も現場の制約条件となります。とくに交通量の多い道路や住宅地では、周辺への影響を考慮しなければならない場面も少なくありません。
こうしたデメリットを踏まえると、コンクリート舗装は計画性が求められる種類の舗装といえます。短期間での施工や柔軟な対応が必要な現場には不向きである一方で、長期的視点に立てば非常に合理的な選択肢にもなります。
つまり、アスファルト舗装とは異なる視点で計画すべき別の種類の舗装であり、用途や立地条件を踏まえて丁寧に判断することが重要です。
舗装の種類による違いと使い分けの考え方
アスファルトとコンクリートの比較表
舗装のなかでも代表的なのがアスファルト舗装とコンクリート舗装です。一見似たように見えるこの2つの舗装も、性能・コスト・施工方法など、多くの違いがあります。ここでは、それぞれの特徴を項目ごとに整理して比較してみましょう。
比較項目 | アスファルト舗装 | コンクリート舗装 |
材料費・工事費 | 安価で施工しやすい | 高価だが耐久性が高い |
施工時間 | 短く、夜間施工にも適する | 長く、十分な硬化時間が必要 |
耐久性 | 中程度(約10〜15年) | 高い(約20〜30年) |
高温時の変形 | 起こりやすい(わだち掘れ) | 変形しにくく安定 |
騒音性 | 走行音が比較的静か | 音が響きやすい傾向あり |
補修のしやすさ | 簡単(オーバーレイや部分補修が容易) | 難しい(大規模な修繕が必要な場合も) |
視認性 | 黒くて夜間に見えにくい | 明るく視認性が高い |
適した場所 | 住宅街・駐車場・歩道など | 空港・交差点・幹線道路・工場など |
このように、舗装の種類ごとに得意な分野が異なります。どちらを選ぶべきかは、コストや耐久性だけでなく、交通量や使用環境といった複合的な要素を踏まえて決定されます。
気候・交通量・環境に応じた使い分け事例
実際の現場では、単純な「価格の安さ」だけではなく、地域特性や施工条件、将来的な維持管理のしやすさまで考慮したうえで、適切な舗装の種類が選ばれます。
たとえば、寒冷地では気温差によるひび割れが起きやすいため、耐寒性能を持つアスファルト舗装の種類が選ばれたり、場合によっては温度変化に強いコンクリート舗装が採用されることもあります。
また、交通量が非常に多い交差点では、初期費用が高くても長持ちする耐久型の種類であるコンクリート舗装が選ばれるケースが多く見られます。逆に、住宅地や生活道路などでは、静音性が高く施工が早いアスファルト舗装の種類が好まれる傾向にあります。
さらに、最近ではヒートアイランド現象の緩和や雨水の浸透を促す排水性舗装など、環境性能に配慮した新しい種類の舗装も登場しています。これらは、舗装の本来の機能に加え、都市の環境改善という目的にも応える重要な選択肢です。
このように、舗装は単なる表面の整備ではなく、条件に応じて最適な種類を選び、使い分けることが求められる高度な土木設計のひとつです。種類の違いを知り、それぞれの特徴を理解することが、最適なインフラ整備への第一歩といえるでしょう。
これからの舗装技術と環境対応
再生アスファルトや省エネコンクリートの技術革新
これからの舗装に求められるのは、「つくる」だけでなく「未来を見据えた持続可能性」です。従来の舗装にも多くの種類がありましたが、近年では環境負荷を軽減する新しい種類の舗装技術が登場し、注目を集めています。
代表例として挙げられるのが、再生アスファルト舗装です。これは、既存のアスファルトを剥がして砕き、再加熱して再利用する技術で、日本ではすでに高い再生率が実現されています。従来のアスファルト舗装と比べて遜色のない性能を持ちつつ、資源の節約と廃棄物削減に大きく貢献しています。
一方、コンクリート舗装でも、製造時のCO₂排出量を抑えるために、省エネ型のセメントを用いた新たな種類の舗装材料が開発されています。また、表面温度の上昇を抑える遮熱コンクリート舗装や、耐久性と環境性能を両立するハイブリッドな舗装の種類も研究されています。
こうした技術は、もはや単なる材料の改良にとどまらず、「舗装という構造物そのもののあり方を見直す」動きにつながっています。将来的には、再生率・省エネ性・熱環境の制御といった性能が、舗装の種類を選ぶ際の新たな基準になるでしょう。
スマート舗装・ICT活用の未来
舗装の世界にも、ICT(情報通信技術)の波が押し寄せています。従来型の舗装とは異なる、スマート舗装という新しい種類が今、誕生しつつあるのです。
たとえば、路面にセンサーを埋め込んで、ひび割れ・振動・温度・交通量といったデータをリアルタイムで収集・分析できるようにする技術。これにより、損傷の予兆を早期に察知し、効率的な補修や計画的な更新が可能になります。これは、単なる舗装から「データを持つ舗装」へと変わる、全く新しい種類の進化です。
また、車両の走行エネルギーや振動を回収して電力に変換する発電型舗装、太陽光や雨水を活用する環境対応型の舗装の種類も実証段階に入っています。これらは、インフラがエネルギー供給源として機能するという、従来では考えられなかった次世代型の舗装です。
施工面でも、ICTを活用した舗装管理システムによって、品質管理や進捗状況の可視化が進み、熟練作業者の技術をデジタルで継承する仕組みが広がりつつあります。これらの技術は、効率化だけでなく、舗装という構造物の信頼性を高める新たな武器となっています。
今後は「舗装の種類」を選ぶ際、耐久性やコストといった従来の尺度に加え、環境性能・デジタル活用・地域適応力といった新しい基準が重視されることになるでしょう。舗装の世界は、確実に次のステージに向かっています。
まとめ
私たちが日常的に利用する道路や歩道、駐車場などの地面には、用途や環境に応じてさまざまな舗装の種類が使われています。中でもアスファルト舗装とコンクリート舗装は、それぞれに異なる特徴を持ち、社会インフラの根幹を支えてきました。
アスファルト舗装は、施工の速さや柔軟な対応力に優れ、都市部や住宅街で広く活用されています。一方で、コンクリート舗装は長寿命かつ高耐久で、空港や交差点など過酷な条件にも対応できる強みがあります。どちらが優れているという単純な話ではなく、目的・交通条件・気候・維持管理の観点から、適切な種類を選ぶことが大切です。
さらに近年では、再生資材の活用やスマート技術の導入により、舗装は持続可能性と環境対応を重視した新たな段階に入っています。道路は単なる通行空間ではなく、都市機能の一部として、エネルギー効率や情報活用を担う存在へと進化しているのです。
こうした多様な選択肢がある今、舗装に関する正しい知識を持ち、現場ごとに最適な判断を下すことが、安心・安全なまちづくりにつながります。舗装の「違い」を知ることは、インフラを支える確かな第一歩です。
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