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土木業界の年収は高い?土木技術者・施工管理職の給与を徹底解説!

土木業界の年収は高い?土木技術者・施工管理職の給与を徹底解説!

土木の仕事はきついのに、年収が低い」そんなイメージを持つ人は少なくありません。
確かに、施工管理などの現場職は長時間労働の印象が根強く、待遇面でも誤解されがちです。ですが、実際のところ土木技術者施工管理職年収は、本当に低いのでしょうか?

このコラムでは、土木業界における職種別の給与水準や、キャリアごとの年収の違い企業や地域による格差、そして今後の展望まで、徹底的に掘り下げていきます。
働く人のリアルな視点と最新データをもとに、「土木の仕事=稼げない」という固定観念を見直すヒントをお届けします。

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土木業界の基本構造と年収の位置づけ

土木業界とはどんな業界か

私たちの暮らしに欠かせない道路、橋、トンネル、上下水道――こうしたインフラをつくり、維持し、管理しているのが土木業界です。表にはあまり出てこないかもしれませんが、災害対応や都市整備、再開発など、社会の根幹を支える存在としての役割は非常に大きいといえます

土木の仕事には多様な職種があります。現場を統括する施工管理、設計や構造解析を担う土木技術者測量計画を担当するスタッフなど、それぞれがチームとして連携しながらプロジェクトを動かしています。土木は一人で完結するものではなく、多職種の集合体であり、そこに携わる人々の責任も大きなものになります。

このような背景から、土木業界は建設業の中でも重要度が高く、公共性の高い仕事が多くを占めます。とりわけ公共事業の比率が大きいため、景気の波に左右されにくく、安定した職域として知られています。施工管理職や土木技術者として公共工事に関わることは、長期的に見ても安定したキャリアの構築につながるのです

土木業界の年収の全体傾向

では、土木業界で働く人々の年収はどうなっているのでしょうか。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(令和5年)」によると、「土木技術者」の全国平均年収は約582万円となっています。これは、所定内給与月額357,000円に賞与を加えた推計値です。

施工管理を含む現場系の職種では、現場手当や残業代の加算によって年収が大きく変動することもあります。職階や経験年数によって差がありますが、30代で500万〜600万円40代以降で700万円超となることもあり、大手ゼネコンでは800万円を超えることもあります。

一方で、民間建設業においては会社規模や現場の規模によって年収にばらつきが生じます。大手ゼネコンの正社員と、地域密着型の中小建設会社とでは、同じ施工管理でも待遇に差があるのが実情です。ただし、いずれにしても「年功序列+資格加算+現場手当」のような構造で給与が決まりやすいため、努力と経験が確実に反映されやすい業界とも言えるでしょう。

加えて、公共工事が中心の土木業界では、工期・予算がある程度安定しており、長期的に安定した年収を維持しやすいという特徴もあります。これはIT業界や製造業などと比べても、土木技術者や施工管理職にとっては大きなメリットといえるかもしれません。

土木技術者の年収を分解してみる

土木技術者の仕事内容と立ち位置

土木業界にはさまざまな職種が存在しますが、中でも「土木技術者」は計画・設計・解析といった“上流工程”を担う専門職です。たとえば、道路の線形計画、橋梁の構造計算、ダムや堤防の耐震設計、都市インフラの整備計画など、社会基盤を構想段階から支えるのが主な役割です。

施工管理が現場の実務全体を担うのに対し、土木技術者は構造上の安全性や設計図面の整合性などを理論的に構築していく立場です。両者は密接に連携しながらプロジェクトを推進しており、技術者の判断は施工現場の精度や効率にも大きく影響を与えます

また、設計事務所や建設コンサルタントに所属している土木技術者が多い一方で、最近では施工会社内にも社内設計部門を設けて、施工管理と一体化した運用を行う企業も増えてきました。このような連携強化により、設計と施工の垣根が低くなり、より柔軟なプロジェクト運営が可能となっています。

さらに、防災や老朽化対策といった社会的ニーズの高まりを受け、土木技術者の存在価値は高まる一方です縁の下の力持ちであることに変わりはありませんが、社会に不可欠なインフラを支える“設計のプロ”として注目される場面も増えてきました。

年収の目安と上がり方

1章でも述べたように、2023年時点での「土木技術者」の平均年収は、おおよそ582万円とされています。ただ、この数字はあくまで平均値です。年齢や経験年数、役職、所属する会社の規模によって、実際の年収にはかなりの幅があるというのが実態です

たとえば、新卒1〜2年目の技術者であれば、年収はおおむね350万〜400万円台がスタートライン。そこから10年ほど実務経験を積み、主任技術者として設計業務を任されるようになると、600万円前後まで届くケースも少なくありません。年齢や経験に比例して、役割も収入も段階的に上がっていくのがこの業界の特徴です

また、設計のスキルだけでなく、施工管理的な目線を持っている土木技術者は、社内での評価が高くなりやすい傾向にあります。現場の状況を理解しながら設計できる人材は、プロジェクト全体を俯瞰できる強みがあり、高年収のポストに抜擢されることもあります

加えて、「技術士(建設部門)」や「RCCM(土木)」といった国家資格を取得すれば、年収アップへの道がよりはっきりと開けてきます。これらの資格は設計分野で非常に高く評価されており、資格手当がつくだけでなく、ポジションアップや昇進にも直結しやすいのです。

また、デスクワーク中心の土木技術者は、施工管理職と比べて労働時間の調整がしやすい傾向もあります。近年では、設計業務もICT化が進み、柔軟な働き方の選択肢が広がっています

施工管理職の年収は?実態と評価

施工管理の役割と求められるスキル

土木工事の現場において、計画通りに工事を進め、安全かつ品質の高い成果物を納めるための要として働くのが「施工管理職です。設計通りに工事が進行しているかを確認するだけでなく、予算、工程、安全、品質などあらゆる側面をコントロールしながら、現場全体を統括します。

この施工管理の仕事には、単なる作業の監督にとどまらず、多くの関係者との調整力が求められます。発注者とのやりとり協力会社との打ち合わせ資材納入の手配など、現場をスムーズに回すためには、高度なマネジメントスキルと豊富な現場経験が不可欠です

また、土木技術者と密接に連携することが求められるのも、施工管理職の特長です。技術者が描いた設計図や仕様書をもとに、現実の工程へと落とし込むには、設計意図を正しく理解し、現場での最適解を導き出す判断力が不可欠です。

さらに、土木施工管理技士という国家資格の有無によって、施工管理職としての裁量や責任範囲も大きく変わります。とくに「1級土木施工管理技士」の資格を持っていると、公共工事の現場責任者(主任技術者・監理技術者)として配置されることができ、年収にも直接的な影響が出てきます。

 年収の実態とキャリア別変化

施工管理職は土木業界の中でも比較的年収が高い職種とされています。なぜなら、現場の最前線であらゆる判断を下す責任を担っているため、仕事の難易度と重圧に見合った報酬が設定されるからです。

実際の年収を見てみると、若手の施工管理(20代後半〜30代前半)でおおむね400万〜500万円前後が相場です。経験を積み、1級資格を取得した中堅層になると、年収は600万〜700万円台に上昇します。さらに、大手ゼネコンや総合建設会社における現場所長クラスでは、年収800万円〜900万円以上に達することも珍しくありません。

なお、近年では土木技術者出身で施工管理職へ転向するケースも増加しています。技術的な知識を備えたうえで現場をまとめられる人材は重宝され、待遇面でも優遇されやすい傾向があります。

一方で、年収は企業規模や地域によっても左右されます。都市部の大手建設会社であれば高水準の給与が期待できる一方で、地方の中小建設会社ではやや抑えられる傾向があります。ただし、地方においても人材不足が深刻化しており、施工管理人材の待遇改善は進みつつあります。

また、土木技術者が兼務的に施工管理を担当する場面もあり、現場と設計の両面に通じた人材へのニーズは年々高まっています。設計だけでなく現場マネジメントの経験があることで、収入面での評価も大きく変わってくるのです。

年収という観点から見れば、施工管理は「苦労が多い分だけ、見返りも得やすい」職種といえるでしょう。特に、資格を取得し経験を積んだ人材は、企業からの引き合いが強く、安定かつ高待遇のポジションを得られる可能性が高くなります。

年収に影響する要素と地域・企業ごとの違い

土木業界における年収は、職種だけでなく「どこで・どの会社に所属しているか」によっても大きく変動します。施工管理土木技術者として同じ業務を担っていても、勤務先の企業規模や地域によって待遇に差が出るのが現実です。

たとえば、大手ゼネコンや建設コンサルタント企業に勤務する技術者は、安定した収益基盤と福利厚生の充実があり、年収も800万円以上に達することもあります。

一方で、地方に本社を置く中小建設会社や自治体関連の土木工事を中心に受注している企業では、同じ施工管理土木技術者であっても、年収は500万円前後にとどまるケースが見受けられます。ただし、生活コストが低い地域ではそれでも十分な水準とされており、年収だけでは一概に待遇の良し悪しを比較できないのも事実です。

また、地域によって土木工事の種類にも違いがあります。都市部では再開発地下インフラの整備が多い一方で、地方では道路改良河川の維持管理といった基幹インフラの補修が中心になります。施工管理の役割もそれに応じて変化し、工事の規模や体制に合わせて柔軟に対応する力が求められます

働き方改革・残業の影響

ここ数年で、土木業界全体における働き方改革の波が本格化しています。2024年からは、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されるようになり、これまで「年収は残業込みで稼ぐ」という風潮が見直されつつあります。

以前は、施工管理職が深夜や休日を含めて現場を見守り、その分だけ残業代で年収をかさ上げするのが一般的でした。しかし現在では、「適切な労働時間内で成果を上げた人にこそ高い評価を与える」という制度設計を取り入れる企業が増えてきています。

同様に、土木技術者についても、柔軟な働き方への移行が始まっています。設計部門や建設コンサルタントでは、フレックスタイム制やテレワークを導入する動きがあり、ワークライフバランスを保ちながら専門性を活かす選択肢が広がっています。 また、施工管理と設計の役割分担が明確になってきたことで、土木技術者がより設計業務に専念しやすい環境が整ってきています。

その一方で、施工管理に必要な判断力や現場感覚を持つ土木技術者は、企業からも重宝され、高い報酬で迎えられる傾向があります

  • 大手ゼネコン(都市部):年収750〜900万円
  • 地方中堅建設会社:年収500〜650万円
  • 公共系技術系職員:年収450〜600万円

このように、年収の高さは単に「職種」だけで決まるものではありません。施工管理土木技術者としての経験、そして勤務先の規模や地域性、働き方の変化への対応力によって、大きく左右されるのが現代の土木業界の実情です。
自分の価値をどこでどう発揮するか――その選択が、将来の年収を左右する鍵となるでしょう

これからの土木業界の年収はどうなる?

技術革新と人手不足が年収を押し上げる?

近年、土木業界には大きな転換点が訪れています。その要因の一つが、慢性的な人手不足です。特に若手の施工管理職土木技術者の数が減少傾向にあり、企業は人材確保のために待遇の見直しを迫られています。かつては「年功序列」が基本だった給与体系も、現在では「スキルや即戦力を重視した年収設計」に変化しつつあります。

加えて、ICT施工やCIMといった技術革新の導入が進み、求められるスキルも高度化しています。最新ツールを使いこなせる土木技術者施工管理の人材は高く評価されやすくなっています。

これに伴い、現場の効率化と品質の向上が求められる中で、施工管理職の役割はますます重要性を増しており、それに比例して年収も上昇傾向にあります。一方で、設計や解析を担う土木技術者も、高度なソフトウェア操作スキルや構造設計の知識を備えた人材が不足しており、今後も市場価値は高まっていくと思われます

また、公共インフラの老朽化自然災害の頻発により、更新・補修の需要は今後も拡大する見込みです。こうした背景のなかで、土木技術者や施工管理職の人材価値は一層高まり、結果として年収アップにつながると考えられます。

 キャリア設計のポイントと年収アップ

では、土木業界で安定的かつ高い年収を目指すには、どのようなキャリア戦略が有効なのでしょうか。ここでポイントになるのが、「専門性」×「実績」×「資格」の掛け合わせです。

たとえば、施工管理職であれば、早い段階で1級土木施工管理技士の資格を取得し、現場代理人や監理技術者のポジションを経験しておくことが年収の底上げにつながります。また、民間企業だけでなく、自治体や公団系の発注者支援業務を経験することで、キャリアの幅を広げることもできます。

一方、土木技術者として年収を上げたい場合には、技術士(建設部門)やRCCM(土木)などの上位資格を取得し、設計や計画の中核を担うことが重要です。特に技術士は建設コンサルタント業界において非常に価値が高く、保有者には年収800万円〜1000万円以上の求人が出ることもあります。

さらに、近年では設計と施工管理の両スキルを併せ持つハイブリッド型の技術者が注目されています。土木技術者でありながら現場の流れにも精通している、または施工管理として働きながら図面の読解・設計提案にも対応できる人材は、企業内でも高く評価され、昇進・昇給のチャンスをつかみやすいのです

年収アップに有効な資格と平均的な加算額(例)

資格名想定される年収加算備考
1級土木施工管理技士年収+50〜80万円現場責任者配置要件あり
技術士(建設部門)年収+100万円以上コンサル業界で評価高
RCCM(土木)年収+30〜50万円設計・発注支援で有利

もうひとつ大切なのは、「プレイヤーからマネージャーへ」という視点です。現場や設計の技術を極めるのも一つの道ですが、リーダーシップマネジメントのスキルを磨くことで、より上位の役職につき、プロジェクト全体を任される立場に進むことが可能です。土木技術者や施工管理職がキャリアを通じて幅広く活躍できる土壌が、今の業界には確実に広がっています

これからの時代、土木業界は「地道な現場職」というイメージから脱却しつつあります。新しい技術を受け入れ、変化に対応できる人こそが、安定と高収入を両立できる土木の未来をつくっていく存在となるでしょう

まとめ

土木業界の仕事は、目立つことは少ないものの、私たちの生活を根底から支える社会的に重要な職種です。

施工管理職として現場をまとめる役割、土木技術者として構造物を設計・計画する役割――いずれも高い専門性と責任が求められます。

一方で、「年収が低い」「労働時間が長い」というイメージが先行しがちなこの業界。しかし、実際には経験や資格、所属企業、地域、そして働き方の変化によって、年収は大きく変わってくることが分かりました。とくに近年は、施工管理土木技術者の待遇改善が進み、技術革新の波と人手不足を背景に、年収水準は上昇傾向にあります

今後も、ICTCIMといった新たな技術を取り入れられる人材、そして管理能力を備えた人材には、より高い評価と報酬が与えられるようになるでしょう。特に施工管理職はプロジェクトの現場責任を担う中核人材として、より高度なマネジメントスキルを備えることで年収アップが期待されます。

一方、土木技術者としてのキャリアを歩む人にとっても、資格取得や専門分野の深掘りによって評価される道が確実にあります。設計や解析に強みを持ちつつ、現場との連携にも精通したハイブリッド型の技術者は、今後ますます重宝される存在になるでしょう。

土木業界で働くことは、単なる職業選択にとどまらず、社会インフラを支える使命感とやりがいに満ちたキャリアでもあります。施工管理も土木技術者も、それぞれの立場から「社会をつくる」という誇りを胸に、安定と成長を両立できる未来を築いていけるはずです
年収という視点を通じて、その価値をいま一度、見直してみてはいかがでしょうか。

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