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#土木の未来を考える

いま注目の土木女子|ドボジョの活躍と建設業の変革

いま注目の土木女子|ドボジョの活躍と建設業の変革

かつて「男子の職場」とされてきた建設業界に、いま新たな風が吹いています。
その象徴が“ドボジョ”――建設業の土木分野で働く女子たちです。力仕事や厳しい現場というイメージが根強い土木の世界ですが、実際には、女性だからこそ活躍できる場面役割も数多く存在します。ICTの導入や働き方改革が進む中、建設業はドボジョの力を必要としています。

このコラムでは、土木女子=ドボジョの活躍を通じて、建設業がどう変化しているのかを読み解き、女性が活躍する未来の建設業の現場像を描いていきます。

能力開発校

なぜ今、“ドボジョ”が注目されているのか

建設業の人手不足が追い風に

ここ数年で「ドボジョ」という言葉を見聞きする機会がぐっと増えました。以前は男性ばかりだった建設業界に、女性が次々と加わってきているのです。なぜ今、土木女子に注目が集まっているのでしょうか。

最大の理由は、人手不足です。少子高齢化が進み、現場で働く人材が年々減少しています。特に若手の確保が難しくなっており、建設業全体で危機感が高まっています。その中で、これまであまり注目されてこなかった女性の力に期待が寄せられるようになってきました

建設業=男の仕事」という固定観念が徐々に薄れ、「女性にも向いている仕事かもしれない」という考えが社会に広まりつつあります。

国や企業がドボジョを後押し

この流れを加速させているのが、国や企業による積極的な支援です。たとえば国土交通省は「女性が働きやすい建設業現場」の整備を掲げ、トイレや更衣室の設置、制服のサイズ展開、休憩所の改善など、現場環境の見直しを後押ししています。

また、建設業会社の中には、女性向けの現場体験会や就職説明会を定期的に開催しているところもあります。現場で働く女性社員と直接話す機会を設けることで、進路選択に迷う学生たちの不安をやわらげる効果も出ているようです。

企業と行政が一体となって、ドボジョが働きやすい環境を整えようとしている姿勢が、若い女性の関心を引きつけているのです。

女性が変える建設業の価値観

さらに注目すべきなのは、女性が現場に加わることで建設業の“空気”そのものが変わってきているという点です。

たとえば、現場に女性がいることで会話のトーンが柔らかくなったり、清掃や整理整頓が自然と徹底されたりするなど、小さな変化が積み重なり、職場環境が整ってきています。また、女性ならではの視点で改善提案をすることで、より使いやすい設計や配慮が生まれる場面もあります
こうした積極的な姿勢柔軟な発想力が、ドボジョに対する評価を高め、建設業における存在感を強めているのです。

ドボジョたちのリアルな日常とは

ドボジョの仕事ぶりをのぞいてみよう

ドボジョって、実際どんな仕事をしてるの?
そう思う方も多いかもしれません。現場で働くドボジョたちは、朝のミーティングから始まり、工程確認、安全点検、業者とのやり取り、写真撮影、進捗の記録……と、1日中動き回っています。天候が変われば段取りを組み直す必要もあり、常に現場の状況を見ながら臨機応変な対応が求められます。

一方、設計を担当している女性は、事務所で図面を引いたり、発注者と打ち合わせをしたり、工事がスムーズに進むように細かく調整しています。黙々と作業を進めるだけでなく、人と話し、判断し、先回りして動く力が求められるのが建設業の現場です

見た目の華やかさはないかもしれませんが、そのぶん「地に足のついたやりがい」がある。そんな日常を、ドボジョたちは当たり前のようにこなしています。

女子だから見える視点、できる工夫

建設業はチームで進める仕事。そこで活きてくるのが、女性ならではの視点や気配りです。たとえば、歩道の幅や段差の有無、街灯の位置といった細かい部分で「そこに目をつけるのか!」と驚かれるような提案をする方もいます。

「この道、ベビーカーが通りにくいな」と感じたとき、すぐに現場で寸法を測って上司に改善を相談したドボジョもいました。実際に使う人の立場になって考えるという感覚が、自然にあるのかもしれません。
もちろん、性別だけで能力が決まるわけではありません。ただ、「女性だからこそ見える風景」が確かにあって、それが現場や地域にプラスの影響を与えているのは間違いないと、多くの関係者が語っています。

現場で感じるリアルな悩み

ドボジョたちが華々しく活躍しているように見えても、実際には悩みも多く抱えています。たとえば「トイレが遠すぎる」「更衣室がない」「制服のサイズが合わない」など、まだまだ女性にとって不便な現場も少なくありません。

また、体力面での不安を感じる女性もいます。夏場の屋外作業は想像以上に過酷で、「初年度は何度も心が折れそうになった」と語るドボジョもいました。
それでも、「現場が完成したときの達成感は格別」「仲間に支えられて続けられた」という声も多く、苦労の中にこそ魅力を感じているようです。

建設業における女性の働き方は、まだまだ発展途上でも、それを支えているのは現場で頑張るドボジョ一人ひとりの前向きな姿勢です

建設業の現場が変わり始めた理由

“3K”の時代はもう古い?

かつて建設業といえば、「きつい・汚い・危険」の“3K”といわれることが多く、女性には縁遠い職場と思われていました。実際、長時間労働や重い資材の運搬など、体力面でハードな面があったのも事実です。

でも今、その風景は確実に変わりつつあります。現場で働くドボジョたちの声や姿が注目されることで、「このままじゃいけない」と感じた企業や業界全体が動き出したのです。

「うちの現場にも女子が来るらしい」
「それならトイレを増やそう」「更衣室、間に合うかな」
そんな声が聞こえてくるようになったのは、ほんの数年前から。女性が働きやすい環境を整えることは、実はすべての働き手にとってのメリットでもありました。

現場にテクノロジーが入ってきた

最近の建設現場では、ドローンが空を飛び、タブレットで図面が共有され、3Dモデルで設計をチェックするのが当たり前になりつつあります。こうしたICT技術の進化は、ドボジョにとっても大きな追い風です。
たとえば、「測量で何時間も山を登る必要がなくなった」と話すドボジョもいます。機械化が進むことで、体力に頼る仕事が減り、女性でも活躍できるフィールドが着実に広がっているのです。

また、こうした新技術に対し柔軟に対応しやすい傾向があり、「デジタル機器の扱いが得意」「スマホ感覚で現場管理ができる」といった声も聞かれます。建設業の“新しい顔”として、ドボジョはまさに時代にマッチした存在なのです。

女性が加わることで職場が変わる

現場に女性がいることで、雰囲気ががらっと変わった――これは多くの職人や監督が実感していることです。たとえば、「言葉づかいが丁寧になった」「挨拶が増えた」「掃除がきちんとされるようになった」など、小さな変化が職場の空気をやわらげています。
「女性がいるからって特別扱いはしてないつもりだけど、自然と気が引き締まるよね。なんか、ちゃんと見られてる感じがするんだよ」ということも。

その“見られている意識”こそが、建設業の現場に新しい風を運んでいるのかもしれません。ドボジョの存在は、技術者としてだけでなく、現場を育てる“空気づくり”の担い手としても、大きな役割を果たし始めています

“女子×土木”が生む新しい価値

細やかな視点がまちづくりを変える

現場で働くドボジョたちは、設計や施工において「気づき力」が高いと言われることがあります。たとえば、歩道の幅や段差、手すりの高さなど、普段使う人の目線に立って工事内容を見直すことができるのは、女子ならではの視点かもしれません。

先ほども例をあげましたが、実際、ある市の公共事業でドボジョが担当した公園整備では、「ベビーカーが通りやすいスロープ」や「日陰のベンチ」が設計に反映され、多くの住民から「使いやすくなった」と好評だったそうです。
こうした利用者目線の改善は、決して派手ではありませんが、まちの“心地よさ”を静かに底上げしているのです。

地域の人とつながるチカラ

土木の仕事は、地域と深く関わる仕事でもあります。住民説明会や工事の事前説明など、人と話す場面も多くありますが、そこでもドボジョたちの存在が光ります。

「男性ばかりの説明会だと、ちょっと構えてしまうけれど、女性が来てくれると安心する」
そんな声を地域の方からいただいたことがある、とある土木会社の社員が話してくれました。

ドボジョは、現場のことをただ伝えるだけではなく、「ちゃんと伝わっているか」「不安が残っていないか」を自然と気にかけながら会話を進めます。こうした姿勢が、地域との信頼関係を築く大きな力になっているのです。

チームに広がる“よい影響”

女性がチームにいることで、現場の雰囲気が変わったという声は数多くあります。
「空気がピリピリしすぎず、でも不思議と全体が引き締まる」
「分担や報連相がスムーズになった」
そんな意見が現場から上がるたびに、建設業の多様性が本当に意味を持ち始めていることを感じさせられます。

土木の仕事は、技術だけでなく、人と人とのつながりでも成り立っています。女性が加わることで、そのつながりがよりやわらかく、しなやかになる。
そんな変化が、建設業に新しい価値を生み出しつつあるのです。

ドボジョのキャリアパスと将来性

広がるキャリアの可能性

建設業における女性の働き方は、今や一つの型におさまりません。ドボジョたちは、現場監督や施工管理だけでなく、設計、積算、官公庁技術職、研究開発、教育分野など、多彩な分野で活躍の幅を広げています

入社後に現場で経験を積んだのち、設計部門へ異動するケースや、本社で発注者対応やマネジメント業務を担うケースもあり、女性であることが選択肢を狭める理由にはなりません。むしろ、柔軟なキャリア構築が可能な点は、建設業界の大きな強みといえるでしょう。

ワークライフバランスの意識が高まりつつある現在では、長期的にキャリアを築く前提で働く女性も多く、結婚や出産後も働き続けるための体制整備が進められています。

資格取得が成長の支えに

女性にとっても資格は、知識とスキルを客観的に示せる大きな武器となります。近年では、企業が女性社員向けに受験支援制度を整えたり、試験対策セミナーを開いたりする例も増えており、建設業における女性の専門性向上に対する期待の高まりがうかがえます

資格取得は、キャリアアップのためだけでなく、自分に自信を持つための大きな一歩にもなっています。

独立・発信という道も現実的に

さらに近年では、建設業界での経験を活かして独立フリーランスとして活動する女性も見られるようになりました。設計業務を請け負ったり、技術コンサルタントとして複数の案件に関わったりと、働き方の幅は年々広がっています。

また、SNS講演活動などを通じて、建設業や土木の魅力を発信する女性技術者も存在感を増しています。ドボジョとして働く姿を社会に伝えることで、次世代への影響や業界全体の認知向上にも貢献しています

このように、建設業における女性のキャリアパスは、以前よりずっと自由度が高くなっています。「土木=現場で一生働く」という固定観念は過去のものになりつつあり、自分のライフスタイルや価値観に合わせてキャリアを築くことが、現実的な選択肢として定着し始めているのです

若い世代の女子にとっての「土木」という選択肢

進路のひとつとして土木を考える女子が増えている

かつて、建設業は「男子が選ぶもの」というイメージが強く、女性が土木に進むというのはごくまれなケースでした。しかし最近では、建設や土木に興味を持ち、高校や専門学校、大学で学ぶ女子が少しずつ増えています。

進路相談の場でも「ドボジョ」という言葉が知られるようになり、土木に関心を持つ女子生徒が建設現場やインターンに足を運ぶ機会も増加しています。体験や見学を通じて、実際の仕事が「想像よりずっと面白い」と感じることが、新たな選択肢としての土木を現実的な進路にしているのです。

学校側でも、女性の進路支援に力を入れる動きが広がり、土木系の学科で女子学生向けの情報発信やサポート体制が整備されるようになっています

SNSや動画で身近になったドボジョの姿

今の若い世代にとって、将来の職業を選ぶ上で重要なのは“リアルな情報”です。その点で、SNS動画配信は大きな役割を果たしています。

Instagramでは、現場で働く女性たちが制服姿や施工の様子を投稿し、日々の仕事を紹介しています。YouTubeでは、業務内容の解説や勉強方法、スケジュール管理の工夫などが共有されており、土木の仕事を自分ごととしてイメージしやすくなっています。

こうした発信が、同年代の女性にとっての“共感”や“憧れ”につながり、「私もやってみたい」「こんな働き方もあるんだ」と前向きな印象を持たれるきっかけになっているのです。

「土木は男子の仕事」という固定観念の変化

建設業といえば男性のイメージが強かったのは、ほんの少し前の話です。今では、土木という仕事をジェンダーで区別するような考え方は時代遅れになりつつあります

女子が選んでも当たり前、そして活躍することが自然――そんな環境が徐々に整ってきているのです。

この変化は、業界全体の意識改革と同時に、女子自身が「自分にもできる」と思える土壌が広がってきたことの証でもあります。女性が土木を選ぶことが、少しも珍しくない時代が、もうそこまで来ているのです

まとめ

建設業の現場に立つ女子――いわゆる「ドボジョ」の存在は、今や決して珍しいものではなくなりつつあります。以前は“男性の職場”というイメージが強かったこの業界で、女性が自分らしく働き、確かな成果を上げているという事実は、業界の変化を物語っています。

ドボジョたちは、現場の空気をやわらげ、利用者の視点を設計に取り入れ、そしてチームに多様な価値をもたらしています。単なる人数の変化ではなく、建設業そのもののあり方が少しずつ、しかし確実に変わっているのです

また、働き方の選択肢が広がったことで、女性が長く活躍できる環境も整いつつあります。現場で経験を積み、資格を取り、さらに自分の強みを活かして別の道へ進む――そんな柔軟なキャリアが描けるようになってきました。

今後、建設業が持続可能な産業であり続けるためには、性別に関係なく、多様な人材が力を発揮できることが重要です。その中でドボジョのような存在は、未来を照らす光の一つになるはずです。

女性が土木を選ぶ。
その選択が、誰にとっても自然なことになる社会が、すぐそこまで来ています。

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